医療はサービスドリブンなインフラです

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INTERVIEW2016-04-23
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プロフィール

恵寿総合病院 理事長
神野 正博

かんの まさひろ○1980年日本医科大学卒業、金沢大学第2外科、富山県立中央病院などを経て、92年恵寿総合病院外科部長、93年院長、95年からは社会医療法人財団薫仙会理事長。


 後編では、神野氏が自施設で手掛けてきた院内PHSの導入やコンビニエンスストアの設置の経緯について伺います。(前編はこちら


豊田 先生の施設は、日本で初めてコンビニを導入されましたし、クレジットカードを使えるようにしたのも日本初でした。院内PHSを導入したのも初めてです。

神野 PHSでいうと、携帯電話は電磁波で影響が出るから、と言われてましたから、PHSならいいんじゃないのと言うと、「携帯がダメならPHSもダメでしょ」って言うんですよ。じゃあと、医療機器を何台も並べて実験してみたら、大丈夫だった。

 コンビニについても、もともとは地元業者による院内売店だったんだけれど、入院患者さんからもう少し営業時間を延ばせないか、と要望が出たので、交渉したんですが断られた。仕方が無いなと思ったけれど、世間を見渡すと街にはコンビニだらけで、24時間営業しているじゃない。じゃあ、それを院内に持ってこられないか、と。

豊田 ハードルはありませんでしたか?

神野 実は病院の外に入り口があるコンビニってほとんど無いんです。でも、うちの施設は病院の外に入り口を作った。休日には外来患者がいなくて、入院患者さんと職員しかいないんだから、営業的に厳しい。それじゃ何だからと、外に入り口を作っちゃった。作れちゃったんです。病院の周りにはコンビニが無かったから、病院の外に入り口を作ることで一般住民も入ることができるようになったわけです。コンビニもボランティアじゃないので、稼げるようにこちらも少しは考えないと。さすがにタバコを売るのはやめてくれ、と言いましたが。

豊田 そういう一歩踏み出すことは結構勇気がいると思うのですが、いかがでしたか?

神野 まあ大変ではありますよね。ただ、メリットとデメリットを天秤にかけて、患者さんや職員の満足度が大きいものならGoだと。PHSだって、それまでの院内放送って医師の呼び出しばっかりだったよね。院内で医師を探すのが一番大変だった。PHSを持たせたら、院内のオペレーションは格段に効率化したわけです。クレジットカードだって未収金のことを考えたら、ある程度、手数料を取られてもいいかなと。患者さんもメリットがあるしね。

豊田 コンビニのお話ですが、外に入り口を作ったというのが印象的です。例えば、今、地域のバスは駅前じゃなくて病院が中心になっている。むしろ、病院に行けばバスに乗れるという時代です。つまり、病院がコミュニティのコアになっていると言えます。その考えを発展させると、病院はただ治療をする場というだけでなく、健康も予防も、ひょっとしたら生活の中心となっていくのではないでしょうか。


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神野 実は七尾市で一番タクシーの乗降数が多いのは駅でなくて我々の施設なんです。また、最近、サ高住を病院敷地内に造りました。自宅から医療機関まで距離がある方々も、退院して遠くから通うのは辛いですよ。しばらくつなぎの期間としてデイリー・サ高住とかウィークリー・サ高住なんてのがあれば、病院と日常生活をつなぐことができるんじゃないかなと考えています。

 それから「楽のり君」っていう無料送迎車サービスを開始しました。最近、警察は血眼になって高齢者から免許証を取り上げていますからね(笑)。会員制だけど、GPS配車システムを使って、オンデマンドで配車する仕組みです。もともと病院と駅前とか決まったところに送迎バスを出していましたが、使い勝手が悪いのか、実は乗車率ってそんなに高くないのです。ならば、空車を走らせているより、オンデマンドの方が患者さんに都合が良いし、コストも変わらないのですよ。

豊田 まさにコミュニティのコアに病院がなるというイメージですね。

神野 あまりこういう話をすると、囲い込みって非難されるんだけれど、世間では、飛行機のマイレージとかポイントカードとか当たり前に行われますよね。それを非難することはないわけで、それと同じだと思うのです。

豊田 今、私は会社経営にかかわっているので、そういう立場から考えると、医療はあまりにもビジネスという観点を避けてきたというか避けさせられてきた感がありますね。しっかりお金を稼ぐからこそ安定して、質の高い医療を提供できるし、腕の良い医師や医療関係者に給料を払うこともできると思います。

神野 継続して医療を提供するためには利益は必要だからね。赤字でも良い、ということを前提にするのは、日本の景気が良い時代だったら良かったのかもしれませんが、これからはそうはいかないでしょう。今後は、「今やっていることを止める」という決断に迫られる機会が増えるのではないかと思っています。人口が減少していく今後、全ての医療機関が全て同じだけ診療科を抱えて、全ての治療を提供できるという時代ではないでしょう。別に医療だけでなくて、例えば、電気や水道、ゴミの回収など、山奥に住んでいる1人の住民のためにどれだけコストをかけられるか、といったことを、住民に対して言わなければいけない時代になっていくと思うんですね。例えば、地域が赤字病院をいくつも抱えるより、道路を1本造って救急車を走らせる方がいいかもしれない。考え方が変わっていくでしょう。

豊田 先生は、医療はサービスとお考えですか、それともインフラとお考えでしょうか。

神野 どちらかに偏るということにはならないでしょうね。サービスドリブンなインフラ(infrastructure driven by service)なのかもしれない。サービスというエンジンで牽引されるインフラというイメージでしょうか。


【インタビューを終えて】コストや費用対効果を重視せずに医療を行うことができるのは日本の医療の良いところではあるのですが、神野先生のおっしゃる通り、いずれは患者も医療者も医療のコストを意識する日が来るでしょう。一方で神野先生は、既存の枠組みにとらわれることなく、常に良かれと思うことに挑戦され続けています。日本の「明日の医療」の方向性を見極める意味でも、神野先生のご活躍から目が離せません。(豊田)





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