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INTERVIEW2016-09-14
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プロフィール

日本病院会 副会長
相澤病院 理事長・院長
相澤 孝夫

あいざわ たかお〇1973年東京慈恵会医科大学卒業、73年5月信州大学医学部附属病院勤務。81年特定医療法人慈泉会相澤病院副院長、88年4月社会福祉法人恵清会理事長、94年より現職。2008年12月社会医療法人の認定を受け、社会医療法人財団慈泉会相澤病院に名称変更。1999年4月より長野県病院厚生年金基金理事、2003年より長野県松本日中友好協会会長、03年より長野県透析医会会長、2010年日本病院会副会長、13年より全国病院経営管理学会会長、15年より日本透析医会理事、15年より地域再生医福食農連携推進支援機構理事長、16年より日本人間ドック学会副理事長など。


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 信州で一般病院として最大規模を誇りいち早く地域医療支援病院の承認を受け、新しい治療への取り組みも積極的なのが相澤病院(長野県松本市)。日本病院会の副会長も務める理事長・院長の相澤孝夫氏は、医療の今後をどう考えているのだろうか。


豊田 先生は相澤病院の3代目として理事長と院長をなさっていますが、今回、医療の将来についてお話しいただきたいと思っています。早速ですが、先生は医療の今後をどうお考えでしょうか。

相澤 言い方が適しているかどうかは分かりませんが、医療と言っても、やはりビジネスじゃないと長続きしないんですよ。利益を上げて、その利益をまた良い医療のためにつぎ込んで、というサイクルを回さないといけません。だけれど、ただ「良い医療を提供していくためにどうしたらよいか」と常にお考えの先生と、「普通にこれまで通りにやっていれば何とかなっていくんじゃないの」という先生と、両極端に分かれているような気がします。上手に両方の考え方を組み合わせてビジネスとして永続していく、継続していくんだ、という概念を持っている人があんまりいないような気がしますね。

豊田 会社の経営と病院の経営は同じようなものだということでしょうか。では、どういう点が一緒とお感じですか。また、逆にここは会社とは異なるな、と感じるところはありますか。

相澤 繰り返しになりますが、会社にしろ病院にしろ、継続していけなければ意味がありません。会社では、継続するために何が必要かと言ったら、利益を出して、一部は株主に分配した上で余った分で継続していくために投資をしていくということです。これは当たり前のことで、これをしっかりとやることが基本です。

 病院も同じだと思うんです。ただし、異なっているところとして、医療は質が問われる点があると思っています。もちろん会社でも、一定の品質を持った製品を作って売るわけですが、それとはちょっと違う概念だと思うんですよね。しかもそのために必要なお金は、国民の保険料と税金から成る国庫から出てくるわけですよね。

 そういう意味では、会社のためだけではなく、どうしても国民のため、あるいは公という言い方がいいのかどうかは分かりませんが、社会全体のためにという概念が経営に関わってくる。患者さんの健康だとか、命を預かっているといった、基本的な“医療魂”というかね、そういったものがなければいけないと思うんです。ただ上手に経営するというだけではダメだと思うんですよね。

豊田 良いものを提供して、対価を得て、それを還元して、投資をして、というのは会社も同じだと思いますが、一方で医療においてはどれだけ良いものを提供しても、その対価には点数というキャップがはめられてしまうところがありますよね。その結果として、差額ベッド代のようなところで稼ぐしかない、という現状もあるのではないかと思います。そのあたり、先生はどうお考えですか。

相澤 あまり自由度を高めすぎると、今度は質の担保の点から問題が出てきてしまう。そこが難しいところですね。きっちりとルールを決めることと自由にさせるというところの間で、どのあたりで落としどころを設定するか、世界各国が悩んでいるのではないでしょうか。

豊田 ビジネスに振り切った米国などもありますよね。

相澤 医療には、科学的に割り切れる部分と科学的に割り切れない部分とがあって、よく言われるのは、医学にはアートの一面があるんだということですね。患者さんの気持ちだとか、患者さんとのつながりだといった、金銭で測れないものもある。それを単純に金銭に置き換えるのは難しいでしょう。かといって、ただ科学的にやっていくだけだ、というスタンスでうまく医療が成り立つか、というと難しいですよ。各国が悩みながら、いろいろな手段を講じているけど、完璧にはなっていないと思うんですね。

 日本は、どちらかというと公的な保険を使って横一線のような形を作りつつも、少しずつ改善を進めて、より良い医療を提供するという仕組みでやってきた。こういうやり方でいいのか問われていると思います。

 まあ、日本はまだいっぱい“無駄”を抱えていますからね。

豊田 医療の行為においてということですか。

相澤 そう。もう少し筋肉質にしないとね。今は脂肪がたっぷり付いていて、ちょっと走ると息切れしてしまう状態に近いかもしれません。もう少し身体を絞り込まないと走れないのは医療も同じじゃないかな。

対談画像2

豊田 私の経験では、例えば1人の患者さんに対し、いろいろな病院でいろいろな検査がされていて、その情報は全くシェアされていません。当直をしていて、別の病院を受診していた患者さんが救急に来られて、データがないのでもう1回MRIを撮りましょう、なんて話はあちらこちらで起こっていると思います。患者さんに聞くと、先月MRI撮ったばっかりですと言っているのにですよ。MRIが少なければ、当然データをシェアしようという考え方が出てくると思いますが、幸か不幸か日本にはたくさんのMRIがあります。使わないと診療報酬も付かないし、なんて話もあります。しかし、これってものすごい無駄なことやっているなと、思いながら研修していたんです。

相澤 確かに、MRIを撮影した後、きちんと診断が付くことが本来の目的で、1回撮影すればいくら、という制度は本来の主旨とは異なるかもしれません。撮影した画像を専門医が見て診断を付ける体制がある、あるいはこういう撮り方をすれば、その疾患を発見するのに一番いい撮り方です、といった質を担保することが大切ですよね。

豊田 はい。でも、そういう視点で点数が付いていないから、撮ることが目的になってしまうんですよね。

相澤 どうしても外形基準というか、この機械があればいくら、こういう建物があればいくらとなってしまっていて、医療行為とその質に対してお金を払っている場面が少ないわけです。

 例えばDPC病院600ぐらいのデータを集めて分析したことがあるのですが、予定手術の前に何日入院しているか知ってますか?

豊田 2日間ぐらいでしょうか。

相澤 そう。2〜3日間ぐらい入院しています。

豊田 その入院は意味がないですよね。

相澤 そう意味がないと思います。米国だと、お金が余計に掛かるということもあって、だいたい手術当日に来院される。でも日本では、きちんとした手術をするために管理をするんだとか、全く意味のないことをやっているわけです。調べてみると、それだけで何百億円です。さらに、手術が終わって、その後、ほとんど何もしない期間ってあるんですよ。患者さんは食事だけ食べて、他には何もしないんです。

豊田 確かに、患者さんはずっと雑誌をロビーで読んでる、みたいなときがありますね。

相澤 私が言うのもなんですが、それって医療なの?ってことですよね。たぶん医療じゃない。その時点で帰宅できるわけです。もし患者さんがどうしても心配だと言うなら、病院の近くにでもホテルを取って通ってもらえばいい話ですよね。この分の入院料だけで600施設合計で800億円ぐらいなんです。

豊田 さらに、医者というリソース、他の医療者のリソースも必要になると。

相澤 1つの例ですが、大腿骨頸部骨折の患者さんがいます。その患者さんの全国の平均在院日数は28日ぐらいです。でも、入院後4、5日経過した後は、治療としての行為はほとんどなくて、リハビリばかりです。それは急性期医療なのかと思って、私の病院(相澤病院)では回復期病棟を作りまして、7、8日でそちらに移すようにしました。

 以前は回復期リハ病棟がなくて、外部のリハ病院に移していたのですが、すぐには転院できないわけです。そのため患者さんは1週間から10日間、当院で入院しながら待っているわけです。で、移った先の回復期リハ病院では在院日数は70日とか80日です。

 回復期病棟を作った後は、今度は早く回転させないと次の患者さんを移せないので、毎日一生懸命にリハビリを行ったんです。そうしたら30日もあれば退院できてしまう。脳卒中でも同じだということも分かりました。

 こうした結果を見て、これまで日本がつくってきた医療って何だったのだろうかと。今までは医師の自由裁量と言われ、医師は公正な、正しい判断をするから医師の裁量に任せようと言ってきた。だけど、実際にはそうでもなさそうだということも分かってきた。

 もちろん収入が減る部分はあります。しかし、減った分はまた何か工夫をして、収入を確保するよう考えていけばいいわけですからね。やってみると、これまで我々がやってきた医療は公正だったのか、と考えてしまうところがあります。

 医師の裁量についても、これまでは医師自身の経験とか習慣で判断しているわけです。今後はデータを見せて、「ここはこう変えた方がいいのではないでしょうか」と問うていくことが大切だと思っています。

 あるいは、データに基づいて不必要な部分の診療報酬をカットしてしまうのも、方法の1つだと思うんです。

豊田 予定手術の患者さんの術前入院には一切保険料を出さない、といったことですか。

相澤 そうです。

豊田 確かにそれで問題ない国がたくさんあるわけですからね。

相澤 そうです。ただそれをやろうとすると衝突が起こります。そして、その衝突を乗り越えるだけの覚悟を持ってやらないといけない。で、衝突を回避するために、「じゃあ仕方がないか」と何も変えないのが、今の日本の医療の課題だと思っています。

豊田 もっと必要、不必要を判断し、筋肉質に変えていければ、総医療費を増やさなくてもできることは多いということですね。

相澤 そうだと思います。医師や他の医療職の給与にももっと回すことができるわけです。医師のマンパワーだって他に回せるわけです。

豊田 なぜそうしたことを進められないんでしょうか。

相澤 文化とか慣習を変えることは大変ではありますよね。実際。自分の病院でやってみてもそれは感じます。入院した日に俺たちが忙しくなるじゃないか、術前にしっかり見ておけばそのまま手術室に入ってもらえますからね。

 しかし、術前のチェックだって、医師でなくてもできることばかりですし、下手すれば今後はコンピューターがデータを判断して、コンピューターがOKと言ったら手術室に行く。そんな時代は近いんじゃないかと思うんです。

豊田 先生方は皆、受け入れておられるんでしょうか。

相澤 診療科によって違います。それは、どこの大学で教育を受けたかと言うことと同じかもしれません。

 抗生剤の投与だって同じです。術後、1週間投与するのが当たり前だと思っていたけれど、術中投与だけで十分だと言うことが分かってきた。術後感染なんてもうほとんどないと口酸っぱく言っても、「いや、大学では1週間やっていたんだ」って言うんですね。「そんなの危ないから僕はやらない」という人はまだいますよ。

豊田 1週間投与することの根拠はあまり明確な答えがないですよね。論文なんかで、術後投与は不要と示されて、「じゃあうちも取り入れてみよう」とやってみる先生が、ある診療科ではいるけれども、別の診療科では頑なに1週間出し続ける、というように、診療科ごとにやることも違っていたりしますね。

相澤 そうなんですよ。それっておかしいでしょう。で、じゃあ、まずは5日間投与で様子を見てみませんかと言って1年間やってみる。次に3日間にしてみましょう、とか言って、少しずつ変えていくんです。なんでそんなこと私がしなければならないんだ、とは思いますけれどね(笑)。

豊田 考えをなかなか変えないのはどんなドクターなのでしょうか。

相澤 大学から派遣される医師って、大学病院でやっていることを絶対視するんですね。そういう医師に考え方を変えていただくのは、かなりのエネルギーが必要ですね。

対談画像3

豊田 外科医をしていて感じていたのですが、寿司職人は皿洗い何年、何かを何年、10年目でやっと握れる、という世界と似ているなと。卒後何年でこの手術をして、何年後にはこれをやって、と。一方、世間では、こういうスキルが身についたら次、これをやれる、といった考え方が一般的です。5年後にこの手術ができる、といっても、無駄に過ごした5年か、いろいろと勉強した5年かで全く違うのに、年次でキャリアが決まっていると感じたんです。専門医資格も、卒後何年か経ったら資格が取れるというけれど、大学院にも通っていたドクターとその間死にものぐるいで臨床をやっていたドクターの資格が得られるタイミングが同じっていうのは、専門医制度は何を見たいのだろうかとも思っていました。

相澤 日本が不得手なのは、個人の評価をきちんとすることだと思うんですよ。私の施設はJCI(Joint Commission International)の認証を取りましたが、やっぱり言われるんですよね、「この医師にこの手術をやらせていい」という判断はどうしてされたんですか、とかね。

豊田 「卒後15年目だからです」「大学で准教授をしていた方だからです」では通用しませんよね。

相澤 「准教授だったから、あなた方は(手術させて)いいと思っているんですか。それはおかしいと思いませんか?」と言われるんです。「准教授だろうと何であろうと、その医師がどこまで何ができるのかをきちんと判断して、では、あなたはこの手術はできますね、と決断するのが病院の責務でしょう」なんてね。

豊田 誰が医師を評価するんでしょうか。

相澤 その診療科の部長が判断して、それを診療部全体のトップに報告して、その後、私のところに回ってくるという仕組みになっています。まあ本当のところは分かりませんが、少なくとも責任は誰にあるか、しっかりとガバナンスを効かせているか、ということを明確にできますからね。良い方向には向かっています。しかもその評価は院内の誰もが見られるようになっています。

豊田 え、それはすごい。

相澤 だってこの先生は何ができるか、ということが分かっていなかったら、手術室の看護師さんが困るじゃないですか。あの先生、1人でできないはずなのに何で手術しているの?ってことを周りが気付けないとおかしいですよね。

豊田 医師の反発は強かったのではないでしょうか。

相澤 まあ、ありましたけどね。私はやっちゃいますけど(笑)。

豊田 でも教育にはすごくいいですよね。

相澤 理屈としては当たり前のことでしょう。評価されるのはみんな嫌だと思います。だけど、これは医療安全、医療の質の担保には絶対に必要だよねと。あと、若い先生にとっては、「自分はこれをクリアしたから次はこれだ」ってことが分かりやすい。嫌なことばかりではないかなと思っています。

豊田 日々の業務に忙殺されて、何となく忙しい期間を経ていれば、何となく一人前になっていく、みたいなのが私の外科医時代の感覚だったのですが、目標が明確に具体的になると日々の取り組みも違ってきますね。

相澤 例えばある部門のトップが、ある手技ができなくても、全く問題ないんですよ。その部門の別の先生ができればいいんです。トップは部門のマネジメントをすればよくて、自分はある手技ができないからと卑下する必要は全くありません。チームとしてどんな力を発揮するか、という方が大切です。プレーヤーであり続ける必要だってないかもしれない。だからこそ誰が何をできるのか、院内全員に示したって問題ないんだと思います。


対談画像4

豊田 先生は37歳頃に院長になられて、年上の先生もたくさんおられたと思います。

相澤 ええ。よくけんかもしました。

豊田 それまでは臨床一筋でいらしたんでしょうか。

相澤 私は研究をしたかったものですから、大学ではずっと研究をしていたんですけれど、父が亡くなったので帰ってきたんです。当時、教授が、「相澤君、せっかくここまでやったんだから博士号ぐらい取りなさい」と言ってくださって。病院で仕事をしながら少し研究をして1年ぐらいで論文を書いて、博士号も取らせてもらったんですけどね。実はそのときの経験が私、今すごく生きているんですね。

豊田 研究のですか?

相澤 いえ、父親の跡を継いだということです。研究者から臨床にいきなり移ってきて、自分はカルチャーショックを受けてるんだけど、父親から息子に代わったから診療の質が落ちたとか言われたくないですからね。私の父はすごく患者さんが好きで、例えば東京への出張で、帰ってくるのが夜9時ぐらいでも、その時間から患者さんのところに顔を出したりしてましたね。往診も大好きで、退院した患者さんの具合が悪いと聞くと、もう真夜中でも何でも飛んで行くって感じでした。さすがにその真似は十分にはできなかったのですが、その跡を継ごうとして頑張ってきたことはすごい勉強になりました。

 今、盛んに在宅だと言われているけど、当時から在宅はあったんです。いろいろな経験をさせてもらいました。

 ほかにも、今、高齢者の診療が話題になっていますけれども、当時だってお年寄りがいて、お年寄りの人が救急で入ってきて、病気を治せば帰れるという問題じゃないってのは何も変わらないわけです。退院支援なんて言っていますけど、そんなのは昔からやっていたんですよ。昔は診療報酬が付いてなかったわけですが、それでもやっていたんですよ。そうした経験が今、すごく役に立っています。

 今の開業医の先生は往診をほとんどしないそうですね。往診は大変だとか、つらいとか。でもやってみると、まあ面白いと言ったら語弊があるかもしれませんが、技術とは違った人と人との触れ合いとか、人生のぶつかり合いなどがあってすごい面白かったですよ。

 末期癌の患者さんを在宅で診ていましたし、人工呼吸器が付いた患者さん、CVカテーテルで栄養をやっている患者さんも在宅でいっぱい診ました。診ようと思えば診られるんですよ。ただ、大変なのは家の人への教育と説得なんです。これはすごい大切だけど、大変なことなんです。これは家族の価値観だとか、そこの個々の家族の持っている人生観がありますからね。

豊田 もう入院させておいちゃった方が楽と思いがちですよね。

相澤 はるかに楽です。患者さんの説得に3時間、家族に3時間かかる、なんてことはあるわけです。だからこそ1回で済ましたいと皆、思ってしまうわけです。でも1回では済まないんですよ。だからそれが退院戦略なんです。最初にこれだけのことを伝えて、1週間後にこれだけのことを伝えて、次にはこれだけ、と。それを3週間ぐらいかけていく。

豊田 異性を口説くのと一緒ですね(笑)。

相澤 おっしゃる通り。そして大事なのは、医療側の我々も頑張るから一緒に頑張りましょうよ、という一言だと思うんです。それは今の医療に欠けているなと思うし、たぶんみんなそういうのはあんまり得意じゃないみたいですね。

豊田 若い先生ほど、ですか?

相澤 若さだけが理由ではないと思うんですが、寄り添い方に違いがあるのかもしれませんね。

 だけど、これから高齢者が増えてきて、そして、まあこんなことを言うと怒られてしまうけれども、そんなにすごい病気ではなくて、ただちょっとした医療が必要だという患者が増えてくるわけです。

 そういう患者さんは、病院でなくても診られると思うんです。何が言いたいかというと、在宅で診れば医療費も削減できるし、その分で次への投資ができるということです。次への投資をするために、変えるべきところは変えていかなければお先は暗いわけです。

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豊田 お話を伺っていて、昔の方が患者さんとの距離を詰めやすかったのかなと感じたのですが。

相澤 そうでしょうね。社会的にも詰めやすかったと思います。でも今は詰めにくい。

 今、インフォームドコンセントってありますよね。説明書があって、説明書通りに説明して、あとは決めてください、って放り投げるわけです。話っぱなしの方が楽だから。そこから距離を詰めていくとなると、正解がない世界に入っていくんです。個々によって事情も考えも思いも異なるわけだから。

豊田 でも、今の若い人は答えを求めたがる?

相澤 そう。でも、答えなんてなくったっていいんです。聞いてやるだけでいいんですよ。よく言うけど、人生に答えなんかない。でも答えは必ずある、って考えちゃうんだよね。答えなきゃいけないと思うから距離が詰められない。

 最近話題になる、医師の仕事はコンピューターに取って代わられてしまうか、という話も、紋切りのインフォームドコンセントだったら取って代わられるだろうね。答えはないけれど伝える。伝えて、相手の意見や思いを聞く。その上でガイドラインに書いていないことを選ぶこともある。それこそが人間ができることだし、これから求められていることではないのかな、と思いますよ。正確な診断なんてコンピューターに任せておけばよくて、患者・家族の気持ちもくみ取った上で答えを導き出すのが医師なんじゃないでしょうか。

豊田 最後に、よく「そういうことは相澤病院だからできるんですよ」とか言われませんか。先生が創業家だからできるんですよね、とか。先代から受け継いだ病院を潰すわけにはいかないという思いもとても強くお持ちだと思うんです。一方で、いわゆる「雇われ院長」で、経営が赤字を出しているから反発を食らってでも何とかしてやろうという方はやはり少ないんじゃないかと思います。余分な“脂肪”が多いのが医療だとするならば、なんとしても断行すべきことはする、という、ある種のワンマンさも必要だと思うのですが、先生はそのあたり、どうお考えですか?

相澤 私がいろいろなところに講演に呼ばれて、必ず言われるのがそれです。「相澤病院だからできるんです」というものです。そのとき私は、「どうしてそう考えるんですか」と聞きますが、「先生は経営者であり、院長だから」と言われるんですよね。

 私はこういうとき、「そう、仰るとおりです。だから全責任を負っていますし、生半可なことはできませんからね」というお話をします。

豊田 最初から覚悟が全然違いますよ、ってことですね。

相澤 では、「雇われ院長」は何をすべきか、ってことになるんですが、私は、やりようはあると思ってるんです。

 「その病院の理念は必ず掲げられますよね。病院をこうしたい、という思いです。院長になったからにはあるはずです。まずそれがなければ院長をやる意味はありません」ということをお伝えしますね。それがなければ病院は絶対に変わりません、ということもお伝えします。私自身は人事権を持っているので、自由に人事をできますが、「自分には人事権がないんだ」と仰る方もいます。「だからできないんだ」とね。だけど、それは言い訳に過ぎません。他の方法がいくらでもあると思います。例えば、組織を少しいじってみるとかね。目標を達成するためにはいろいろな手段があって、人事だけが全てではありません。

 何より、理念、理想を掲げ、それを皆にしっかりと提示することです。そこから始めないと何も変わりません。で、公表した時点で、覚悟を決めなければいけません。この2つがなかったら何も動かないと思います。まあ、達成するまでのスピード感に差は生まれてしまうかもしれませんけどね。


【インタビューを終えて】医療といっても事業性を考えなければ長続きしないと語る相澤先生との対談は、経営者と話をしている感覚に陥りました。いかに「自分の」病院をよくしていくべきかを考える、そのためには多少の衝突は覚悟する。そんな理事長/院長としての姿勢を感じました。相澤病院で相澤先生だからできると言ってしまうのは簡単ですが、このような考えと実行力を持った院長先生が全国各地で増えることがこれからの日本にとって必要不可欠であると感じました。(豊田)


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