イラスト:ソリマチアキラ

 新年早々、友人のA君から景気のよい話を聞いた。

 12月末に提出した決算書の売上高に占める薬剤比率が、なんと42.9%だったという。スゴイ!!どれだけスゴイのか。

 2013年社会医療診療行為別調査によると、調剤行為別にみた受付1回当たり点数の構成割合において、薬剤料は74.4%を占めている。うちの会社は、スタッフに技術料を取ることを常に意識させ、ボクは卸との価格交渉に強気で臨んで、やっとのことで69%なのだ。

 A君はMR時代からの友人で、ボクと同時期に会社を辞めて開局したのだが、店舗を次々に展開するボクとは対照的に、彼は決して店舗を増やそうとはしなかった。ベッドタウンの駅前にある小さな薬局で、自分も調剤をしながら、学会で発表したり、地域の薬剤師会の仕事をしたりと、薬剤師としてそれなりに満ち足りた職業人生を送っている様子だ。ただ、それほど儲かっているとは知らなかった……。

 A君の薬局の最寄りの医院2軒は、耳鼻咽喉科と皮膚科。少し離れた所に内科があるほか、駅前なので面の処方箋も少なからずあり、1日70〜80枚程度の処方箋を応需して年商1億8000万円ぐらいだと言っていた。

 驚異の薬剤比率42.9%には、少々カラクリがある。14年4月の調剤報酬改定において導入された未妥結減算ルールが影響しているのだ。減算を免れるために急いで妥結した結果、薬価差益率を16.5%にできたという。差額分は13年4月まで遡って支払われるため、それを含めると43%を切る薬剤比率になったというわけだ。もっとも、未妥結減算ルールなどなかった13年も薬剤比率は56.3%というから、やっぱりスゴイ。

 なぜA君はそこまで薬剤比率を下げられるのか。まず第1に、耳鼻咽喉科、皮膚科の医師をパートナーに選んだことが挙げられる。これらの科は基本的に医薬品の備蓄が少なくて済む。また、特に皮膚科は混合調剤の処方が多ければ技術料が増える。練り機を購入して、やる気を見せれば、先生も頑張って処方を出してくれる。混合調剤をしていると、他の薬局に患者が流れにくいというメリットもある。

 さらには、皮膚科の先生はA君を信頼していて、後発医薬品への変更を全面的に任せてくれているという。かくしてA君は、後発医薬品調剤体制加算2(22点)を算定した上、薬価差益の大きな後発品を選べるのだ。実際、先発品の薬価差益率は前述の16.5%だが、後発品を含めると20%超というから驚きだ。

 勝手にA君の“懐”を計算してみた(社長は常に収支を計算する習性があるのだ)。年商1億8000万円で、薬剤比率が42.9%だから薬剤費は7722万円。薬局の家賃やリース代、薬剤師や事務スタッフの人件費は、どんなに多く見積もっても3000万円程度、手元に残るお金は7000万円強となる。借金の返済が幾らあるか知らないが、A君の年収が3000万円であったとしても、会社はビクともしないだろう。

 うーむ。あくせく店舗を増やして、やれ在宅だ、やれ健康ステーションだと、ライバル会社に負けないように、日々頑張っているボクは一体……。やっぱり、薬局はオーナー薬剤師が1店舗だけ経営するのが効率的なのかも。

 昨今、若者はサラリーマン志向で大手に就職したがるが、開局はこんなにオイシイ!年収3000万円はちっとも夢じゃない。Boys, be ambitious like this oldman!(長作屋)

(「日経ドラッグインフォメーション」2015年1月号より転載)