診療報酬改定が近づくと、いつも「薬局はけしからん!」という声があちこちから聞こえてくる。ほとんど風物詩のようなものだが、今回は企業の内部留保(利益のうち、企業内部に保留され蓄積されたお金)が多過ぎることがターゲットになっている。
だが、うちの社内を見渡しても、内部留保なんて姿も形もない。メガチェーンの社内にはそんなにお金があるのかと思うと、かなり羨ましい。
ただ一社長としては、「内部留保が多いのはけしからん」という主張には違和感を覚える。そもそも薬局チェーンは株式会社であり、利益を生み出し税金を納めるのが“仕事“だ。株式会社だからこそ、決算の数字が公になり内部留保が問題になる。
しかも株式会社は税制上の優遇がなく、税金をたくさん払っている。褒められこそすれ文句を言われる筋合いはないんじゃないか。国民のために、ボクたちだって頑張っている。
「けしからん」と言う人たちは、税金や保険料でもうけてはならぬという。確かに、国の財政と人口構成を考えれば、この先は厳しい。でも薬局だけを標的にするのはおかしい。だって、病院や診療所だって相当もうけているのだから。
その実態を最も詳しく知っているのは、われわれのような門前薬局の社長かもしれない。少なくとも、ボクはよ〜く知っている。
例えば、100床程度の外科系病院のA院長は月収500万円、年収にして6000万円もらっている。奥さんは、どう見ても専業主婦だが、月に250万円の給与をもらっている。嫁にいっていない姉と、嫁ぎ先から戻ってきた妹は、病院とは別の社会福祉法人から、それぞれ100万円の月収を得ている。ボクは、彼女たちが給料に見合った仕事らしいことをしているところを見たことがない。
透析ベッドが100台ある腎臓内科クリニックのB院長も、明らかにお金を持っている。子どもは2男2女。子どもが4人もいるというだけで、普通はかなり大変だ。なのに、B院長は4人とも医師にするため、私立の中高一貫教育の学校に入れた。最終的に医師免許を獲得したのは2人だったが、大学は自宅からは通えない日本一学費が高いといわれている都会の医大に入った。どう少なく見積もっても、4人の学費に2億5000万円くらいは掛かっているはずだ。
ボクだって、経営者の端くれとして、世の中の平均年収よりはたくさんもらっている。でも日本一学費が高い医大に息子を入れるとなると、ボクのお小遣いが無くなるどころか、先祖代々の田畑を担保に入れざるを得なかっただろう。そう考えると、うちの息子は孝行者だ。
極め付きはC院長。先日、C院長夫妻とボクとボクの奥さんで会食をしたが、院長夫人の身なりは正真正銘のセレブだった。さらに、出てきた料理に驚いた。C院長の行きつけの割烹料理屋だったが、見たこともない大きな松葉ガニがデデーン!と鎮座していた。席に着くやいなや料理長が出てきて、「先生のために特別に取り寄せました」という。目を丸くしているボクたち夫婦の隣で、C先生の奥様は「あらぁ、今日のは少し小ぶりね」と、事もなげに言う。聞くと、シーズン中はしょっちゅう食べているらしい。一体、この夫婦の金銭感覚はどうなっているのか。
そういえば誰かが「母屋でおかゆ、離れですき焼き」と言ったが、なんと母屋は大きな松葉ガニをしょっちゅう食べていた!!
この人たちは来年の診療報酬改定なんて、大して気にしないんだろうな...と、ボンヤリ思いながらいただいたカニのお味は、おごってもらったせいもあり、最高にウマかった!!(長作屋)