まずは読者の皆さんにお詫びを申し上げたい。
前々回の本連載で、「薬価改定に比べれば調剤報酬改定なんて大したことはない」と豪語してしまったが、それは全くの誤りだった。
2〜3月に出た調剤報酬点数や要件を見て、腰を抜かした。ザッと試算した結果、なんと年間1億円近い収入減になりそうなのだ。こりゃ、我が社の一大事だ!
最大の問題は基準調剤加算が算定できなくなる店舗が多いこと。「かかりつけ薬剤師」の届け出ができる薬剤師が少ないからだ。決してパートが多いわけではない。中途採用を極力やめて、真っ白な新卒薬剤師を採用して当社のカラーに育てるという方針に切り替えたばかりなのだ。3年目以下の薬剤師が多い上に、若いうちに経験を積んでもらおうと定期的に薬局を異動させている。
国が示したかかりつけ薬剤師のコンセプトは悪くないと思うものの、その要件はうちにとって涙が出るほど厳しい。とはいえ、決まってしまったものに文句を言っても仕方がない。点数の主旨に則って、算定できるものは算定するべく努力しようと、前向きに考えている。
しかし、承服しかねるのは、今回の改定があまりにも“チェーン叩き”の色合いが強い点だ。「チェーンは儲け過ぎ」というのが理由らしいが、チェーンの収益性が高いのは企業努力だ。
もちろんボクだって、医療保険制度の中では利益が出ている部分を抑えるという理屈は分かっている。だったら、そう言えばいい。「ちょっと君たち儲かっているみたいだから、少し我慢してくれないか」と言われるならまだしも、努力して利益を上げて税金を多く納めているにもかかわらず、「チェーンはけしからん」と、まるで悪者であるかのように言われては、何だか切ない気持ちになる。
さらに納得がいかないのは、そういう外部からの圧力に対し、身内だと思っていた薬剤師の職能団体が、「薬局儲け過ぎ」の声が聞こえるや否や、「そうなんですよ。大型門前がねぇ、チェーンがねぇ」と賛同しているように感じられたことだ。医薬分業率が70%近くになったのは、薬局チェーンが医療機関の門前に薬局をつくってきたからに他ならない。パパママ薬局ばかりだったとしたら、ここまで分業は進まなかっただろう。
しかも当社のような中小から大手まで、薬局チェーンはその団体に、決して安くない会費を払っている。自分たちの事業資金の提供者を、なぜそんなにあしざまに言うのだろうか。グループ全体で月4万枚以上の処方箋を応需する薬局の薬剤師が、一気に脱会したらどうなるか、考えてみてほしい。そろそろチェーンも個店も同じ薬局と認識して、一緒になって業界を良くしていこうと考えてもよいのではないだろうか。
ボクたち薬局チェーンの経営者からすると、個店の経営者は脇が甘過ぎて、交渉力に長けていないと感じることが多い。ここはひとつ、薬剤師の職能団体の執行部に薬局チェーンの社長を複数人、配してみてはどうだろう。
ボクは薬剤師じゃないので資格はないが、薬局チェーンには薬剤師の社長がいっぱいいる。あの手この手で危機を乗り切ってきた企業の経営者は、間違いなくタフネゴシエーターだ。そして薬局チェーンの社長は、何といっても医師との交渉には慣れている。今後の薬局業界をリードするのは、そういう人材であるべきではないかと思う。(長作屋)