問題は情報収集にとどまらず、患者がいるところでひそひそ話をしたり、「これから△△の患者さんが来ると電話がありました!」と、他の患者の前で大声で告げるなど、デリカシーを欠くような行動が目立つようになった。

 こうした行動に対し、スタッフたちからクレームの声が上がり始めた。スタッフが私に対し、家族が病気になったり結婚を控えているといった報告をしてくれた際に、「A子さんには絶対知らせないでほしい」という申し出が相次ぎ、「では、どのタイミングでどのように皆に報告しましょうか?」と相談することが多くなっていった。

今回の教訓

 長年貢献してくれたスタッフといえ、やはり、行き過ぎた行動には毅然と注意しなければならない。まず全員に対し「勤務中の仕事以外の私語は慎むこと」と注意した上でA子を呼び、自身の過剰な「介入」などが原因で同僚からの評価が低くなってきた現実を伝えた。

 また、スタッフ間のトラブルを報告しにきた際には、「報告してくれてありがとう」と伝えた上で、「でも、そのことで本人たちから何も話がない以上、私も動けないし、そのことでA子さんが困っていることがあるの?」と返すようにした。

 一方で、「A子さんと休憩室で2人きりになると、すごく突っ込んで聞いてくるんです」と訴えるスタッフたちには、「『このことは私の問題なので。心配してくださってありがとう』ときっぱり伝えていいですよ」とアドバイスした。

 そのほか、A子の仕事がマンネリ化しないよう、外部の講習会やセミナーに積極的に参加してもらい、新しい刺激を得てくれればとも考えた。ただ、これに関しては、講習会に参加している他院の情報や噂を仕入れてきそうで、まだ実行に移していない。

 もともと賢明なA子は、注意を受けた後、「行き過ぎでした」と反省の言葉を述べに来てくれた。ただ年齢とともに修正が利かなくなるのか、いまだに時折、同様のお節介が見られるようだ。

 A子に限らず、どのようにしたら、長く勤めても「初心忘れず」の心境で仕事をできるようになるのだろうか。軌道修正のための様々な手を打ってきたものの、より根本的な解決策を講じるのはなかなか難しいと感じている。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
天尾仰子(ペンネーム)●日経ヘルスケア、日経メディカル Onlineの連載コラム「はりきり院長夫人の“七転び八起き”」著者。開業18年目の無床診療所で事務長として運営管理に携わり、医院の活性化に日々努めている。