生まれて初めて政治家のパーティーなるものに参加した。主役は、元厚生労働大臣の〇〇氏。
〇〇氏はボクの知人の知人で、先日、会食の機会があり、ボクは末席に座って話を拝聴した。そもそも政治家はしゃべってなんぼの“職業”なのだろうが、〇〇氏の話は本当に面白かった。その会食のことを覚えてくれていたとは思えないが、ボクにもパーティーの案内状が届いた。知人に誘われたこともあるが、また面白い話が聞けると思い、出席することにした。
当日、老舗高級ホテルの大広間には「〇〇君を励ます会」と書かれた吊り看板が掲げられ、会場内は元気とカネと社会的地位がありそうな男女であふれ返っていた。定刻になり、司会者の「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」という発声で会は始まった。
あれ?「〇〇君を励ます会」とあるからには発起人がいて、冒頭で会の趣旨を話し、主役を紹介するのが一般的だ。しかし、司会者がいきなり主役の〇〇氏を紹介。登壇した〇〇氏はニコニコしながら、「選挙が近いが、決してそのための会ではありません。実は、今日は私の誕生日でもあり、その祝いの会でございます」と言いつつも、「霞が関では来年度予算の分捕り合戦が始まっています。私としては医療と介護に何とか取り付けていきたいと思っており、今日はその決起大会としたいと思います」と、当たり前ながら、単なるお誕生日会ではないこともしっかりアピールした。
驚いたのはその後だ。〇〇氏は、いきなり「実は、今日の会を行うに際して、発起人をお願いするのをすっかり失念しており、この場に至ってしまいました」と話し始めた。し、しつねん? ……。そんな失態があり得るのか、秘書はクビになるのではないか、などとドキドキするボクの心配をよそにスピーチは続く。
「ご来場いただいた方々のお顔を見渡しましたところ、日本医師会会長が来てくださっているようで。ここは、ぜひY先生に発起人をお願いしたいのですが」と、壇上から堂々のご指名となった。
Y会長は突然の指名に驚きながらも壇上に登り、挨拶を始めた。〇〇氏と自身が同じ出身地であることから始まり、自身と〇〇氏の仲を示すように、議員会館で昼どきに面談したときのエピソードなどを面白おかしく話し、さらに〇〇氏が日本医師会と一緒になって、国民の健康を守るためにいかに奮闘してきたかを朗々と語り上げた。
診療報酬うんぬんといった話は一切せず、国民が安心して暮らせるよう医療・介護の問題に取り組んでいくという天下国家の話に、普段は薬剤師に無茶を言う人たちのトップであることを忘れ、思わず拍手喝采してしまった。
知人から聞いた話だが、事前にY会長に発起人をお願いすると断られる可能性が高いが、パーティー会場で大勢の前での指名であれば、潔く受けてくれるだろうと見越して、〇〇氏は“失念”作戦に出たのだという。知人はボクの耳元で「社長、これが政治ですよ」とささやいた。うーん、大人の世界だ。
こうした駆け引きが行われるのは、政治家の世界では日常茶飯事なのだろうが、その世界で我らが職能団体はうまく渡り歩いているのだろうか。そういえば、我が職能団体の幹部たちはどこにいるのだろう。会場内を探したが見付けられなかった。
あぁ、2018年の改定も厳しい展開になりそうだ。(長作屋)