さらに、今後また無期転換の申し込みがあり得ることを考慮すると、常勤と無期転換者用の就業規則を作成し、定年についての規定や労働条件を明確にした方がよいとのことだった。

 翌日、院長は診察終了時にC美を呼び、前日に社労士から言われた通りのことを提案してみた。すると、C美は「ありがとうございます。65歳までパートで働き続けられるなら、それで結構です。実は、娘が乳児を抱えて離婚して戻ってきたので、少しでも収入が必要で……。今のままでは、60歳で雇用を打ち切られてしまうのではないかと心配して、調べてみたところ無期転換のことを知り、唐突に感じられたかもしれませんが、申込書を出させていただきました。今後とも、よろしくお願いします」とのことだった。

 E江については、契約更新時に注意をし、改善が見られないときは契約更新しない旨を伝えたところ、勤怠状況と仕事への取り組みが変化してきているようで、他の職員からも好意的な意見が聞かれるようになってきた。

 労働関連法の改正については、「知らなかった」では済まされないことが多い。きちんと対応していないと、後になって急きょ対策を迫られ、準備不足故にうまくいかないケースも少なくない。

 「働き方改革」関連でも、年次有給休暇が10日以上付与される職員に対して、付与日から1年以内に5日間の有休取得を義務化する制度が、既に4月に施行されている。来年には時間外労働の上限規制が施行される。いずれも、違反した場合は罰則が付されるものだ。順次施行されている法改正の内容をチェックし、場合によっては社労士などの専門家と相談しながら早めに対処しておくことをお勧めしたい。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
加藤深雪(特定社会保険労務士、社会保険労務士法人 第一コンサルティング代表)●かとう みゆき氏。日本女子大人間社会学部卒業後、2003年第一経理入社、2018年10月より現職。企業や医療機関の人事労務コンサルティングを手掛け、中小企業大学校講師や保険医団体の顧問社会保険労務士も務める。