イラスト:畠中 美幸

 A眼科診療所に勤務する事務職C子。人柄は悪くはなく、仕事は一通りできるのだが、事あるごとに周りの職員に「辞めたい」と愚痴をこぼしている。

 医療機関の職員が、新卒で入職した勤務先で定年まで勤め上げるケースは、それほど多くはない。特に有資格者の場合、転職にはさほど困らないことが多く、職業人生の中で転職を繰り返すことが少なくない。

 A眼科診療所でも職員全員が中途採用者で、平均勤続年数は5年程度であり、職員から退職の申し出があれば、そのまま聞き入れてきた。C子に関しても、退職の意思をはっきり示していれば、院長としては受け入れていたものと思われる。

 ところがC子は、周りの職員に対して「辞めたい、辞めたい」と愚痴を言っているものの、本当に辞めたいのか判然としない。院長は、「そういう感情を抱くこともあるのだろう」と思い、目をつむっていたが、愚痴をこぼす状況が1年以上も続いており、組織への影響が気になってきた。

 というのも、「辞めたい」という発言のみならず、自院に対する否定的な発言を繰り返すため、職場全体の雰囲気が悪くなってきたからだ。C子は古参スタッフの1人で組織内の影響力が強く、周りの職員もC子の発言に迎合せざるを得ないのが実態で、新人職員もC子に連鎖するかのごとく、ネガティブな発言が増えてきた。

 院長は以前から、組織の活性化を図りたいと考えていたが、このままでは職員たちが離職してしまい、活性化どころではなくなると思い、社会保険労務士に打開策を相談した。