Illustration:ソリマチアキラ

 30年前、MR 時代に仲良くしていた医師が開業し、そのクリニックの隣につくったのが長作屋薬局第1号店だ。当時、今のように処方箋調剤できる薬局が多くなかったので、クリニックを受診した患者の9割以上は、隣にあるボクの薬局に処方箋を持ち込んでいた。

 隣の医師とは、薬剤師が毎日のように顔を合わせて小言を言われたり、薬の在庫を伝えたり、「あの患者さんの薬は…」といった話をしていた。しかし、こうした薬局は「マンツーマン薬局」と呼ばれ、「コバンザメ商法」などと揶揄 (やゆ)されるようになった。

 そこで、長作屋薬局も多くの医療機関の処方箋を応需する「面薬局」を目指し、健康フェアを行ったり、ハーブや漢方などを使った未病治療に取り組むなど、地域住民が気軽に訪れる街の健康ステーションになるべく頑張った。

 そうこうするうちに、在宅の重要性が言われ始めた。医薬分業率が頭打ちとなり、店舗の応需処方箋枚数を増やすため立地に左右されない在宅にも一生懸命取り組んだ。

 だが残念なことに、健康管理も未病治療も在宅も、見事なまでに儲からない。それでも地域の人たちの役に立つなら、それが薬局の生き残りの道だと信じてきたが、最近、どうもそれもビミョー だ。例えば、友人が経営する地域ドミナントのドラッグストアは、OTC薬も健康食品も豊富にそろっており、しかも雑貨や食品、お弁当まで売っていて近隣住民の生活拠点となっている。健康フェアや栄養相談、お薬相談会、処方箋調剤も行っていて、スタッフは様々な相談を受けることで日々スキルを磨いている。申し訳程度にOTC薬を置いている“調剤薬局”には到底真似できない。

 在宅についても、以前からずっと担当してきた高齢者施設が大手チェーン薬局に乗り換えるという事件が立て続けに起こった。薬局は、在宅医療・介護の一翼を担う存在になるべきであり、これからも力を入れていくつもりだが、それにしても大手チェーン相手にどこまで戦えるのか、正直、不安だ。

 健康サポートや在宅が散々な中、長作屋薬局の中で利益率が高値安定しているのは、皮肉なことに在宅もやっていない、OTC薬も最小限しか置いていないマンツーマン薬局だ。応需処方箋枚数は1日40枚弱、隣の医療機関とのコミュニケーションは十分取れている。

 そこでひらめいた!面分業なんて言わずに、隣の医療機関とがっつり連携して、検査値はもちろんカルテも見せてもらい、その患者の薬を一元管理し、 薬物治療のサポートを充実させ、病院の薬剤部のように医師から頼りにされる薬局になるというのはどうであろう。立地上も近い方が医師の治療方針を確認しやすく、服用後のフォローアップなどの薬学管理も充実するはずだ。

 これまでは「薬局の半径500メートルに住む人たちの健康を守る」と思っていたが、そんなことを言っている間に、 隣の医療機関の患者の3割程度は他の薬局を利用するようになっているではないか。もう振り回されない。これからは 「隣の医療機関に通う患者さんを大切にして、全処方箋を受ける」を目標に、1枚たりとて取りこぼさない心構えに切り替えだ。原点回帰! まずは、「お薬は 〇日分ですから、〇日までに来てください。お薬を用意してお待ちしていますね (ニコッ)」から始めるぞ。(長作屋)