Illustration:ソリマチアキラ 

 来春の新卒の採用状況が芳(かんば)しくない。会社見学に来た薬学生はまだ3人。採用担当者に言わせると「問い合わせはそれなりにある」らしいが、それではどうにもならない。

 我が社は慢性的な薬剤師不足であり、ぜひとも新人を採用したい。もちろん即戦力として活躍してくれる中途採用者も貴重な戦力だ。ただ、前職の経験から、長作屋の風土になじんでもらえないことも多い。さらに中途採用者は、人材紹介会社への支払いがかさむという大きな問題もある。今や、紹介料は採用した薬剤師の想定年収の40%は当たり前、50%のこともあり、経営を圧迫しかねない。

 にもかかわらず、採用担当者たちからは何が何でも薬学生に足を運んでもらい、就職してもらうという気迫が感じられないのだ。ふと、採用担当者たちは薬学生に、長作屋の魅力をどう伝えているのかが気になって、聞いてみた。

 すると、「在宅に取り組んでいることですかねえ」と担当者A。いやいや、今やどこの薬局でも在宅はやっているでしょ。担当者Bは「給与は低いわけじゃないですが、高いと言えるほどじゃないですよねえ」と。思わず「申し訳ない……」と謝ってしまった。担当者Cはうれしそうに「社長や役員も参加するゴルフコンペは魅力ですよ」。ゴルフをしない薬剤師はどうするの。3人いる採用担当者の誰一人として、まともな答えを返せない。そりゃ、苦戦するわけだ。

 この連載にも何度か書いたが、長作屋ではできるだけ最新の医療機器を取り入れてきた。全自動分包機やピッキングマシンの導入も早かったし、最新の鑑査システムも導入している。もちろん小規模店ではVマス分包機もまだ使っているが、薬剤師に専門的な仕事をしてもらえるよう、機械化に励んでいる。

 研さんのための機会もできるだけ提供しているつもりだ。新人教育に加えて、専門医や専門薬剤師による勉強会も定期的に行っている。研さん奨学金制度を設けて、専門・認定薬剤師や学位の取得を目指す人などには時間や費用面でサポートしている。

 また、エリアを限定したドミナント展開で、地域に根付いた活動がしやすいのも特長だ。多職種との良好な連携関係が築けており、エリア内の在宅患者を多く任せてもらえている。さらに、“重たい処方”が集まる基幹病院前の薬局から、医師とタッグを組んでプライマリケアを担う薬局、面の処方箋が多い街の薬局など、様々なタイプの薬局を有しており、全てを経験した上で自分の専門性を決められる。さらに、永年勤続者を対象とした8日間の海外薬局研修も実施している。こうやって書き出してみるとなかなかイケてる薬局ではないか(自画自賛!)。にもかかわらず……。

 やはり現場を知らないスタッフが薬局の魅力を語るのは難しいのだろうか。薬局事業部の中に採用部門を作り薬剤師が関わるようにすべきなのではないか。そんなことを考えながら、たまたま本社にいたエリアマネジャーの薬剤師に、当社の魅力を聞いてみた。すると、彼はしばらく考えた後、「そうですねえ。社長が、親しみやすく頼りがいがあり、尊敬できる人物という点ですかねえ」とニヤリ。そ、それはそうかもしれないが……(照)。やっぱりダメだ、昔のように、ボクが就職フェアで薬学生を呼び込むしかないか。(長作屋)