トラブルの経緯

 今回紹介するのは、整形外科の無床診療所で起こった職員トラブルだ。同クリニックの事務は、常勤3人、パート2人の体制。事務主任が退職したため、勤務5年目の常勤Aさんに、「あなたが中心となって頑張ってほしい」とお願いした。Aさんは30歳代前半で、前職を含めると8年の経験がある。感情的になりやすいところもあるが、仕事はできる。

 退職者の補充のため常勤職員を募集し、Bさん(30歳代後半、経験4年)を採用。能力を見極めるため、3カ月の試用期間中に基本業務を経験させるようにAさんに指示した。

 まずは受付からスタート。2週間後、Bさんに「仕事はどうですか?」と聞いてみると「慣れてきました」とのこと。だが、Aさんに「Bさんの仕事ぶりは?」と聞いてみると「まあまあです。覚えるのに時間がかかります」と評価が低い。他の職員は特に問題ないと評価しており、Aさんだけが低評価を下している印象だった。

質問しても無視、院内の雰囲気が悪化
 1カ月が経過しても、まだBさんは受付業務しか任されてない。本人に状況を聞いたところ、「受付はできるようになりましたが、他はまだです」とのこと。

 そこで、Aさんに「次の業務を教えたらどうだろう?」と話すと「レジミスや指示を守らないこともあるので、まだ無理です」と言う。「とはいっても、当初よりミスは少ないでしょ?」「そうですが……」「受付だけを任せるならパートで十分。常勤なんだからレセコン入力を教えてください」。Aさんは不満そうな顔で「分かりました」と返事をした。

 仕事を教えない理由が分からないので、弊社から医事担当の女性スタッフをサポートで派遣することにした。1週間後、彼女から驚くような報告があった。「Bさんが質問してもAさんが無視しています。教えないこともあります」「雰囲気が悪くてBさんは辞めるかもしれません。周りの職員もAさんの顔色をうかがいながら仕事しています」「業務分担は全くできていません。Aさんが1人で抱えています。皆逆らえません」。ここまでひどい状況になっていたとは予想外だった。

 院長も、「Aさんは仕事ができる人なのに……。意外だね」と信じられない様子。再度Aさんを呼んで、「Bさんにもっと計画的に業務を教えてほしい」「ローテーションで業務分担を図るように」と、今度は手順を示しながら優しく指示した。

 それから2週間。耳に入るのは「Bさんは教えてもミスがあり覚えが悪い」と言うAさんの愚痴と、「Aさんは気分次第で仕事がやりにくい」と言う周り職員の話ばかり。Aさんがどんどん浮いてきていることは明らかだった。