どんなに労働環境が良く、職員に恵まれていると思われる病医院でも、人が集まればいろいろな問題が起こるものです。日々、忙しい中ではありますが、院長や事務長は、患者さんばかりでなく、身内の職員に対しても目を配っておくことが必要です。問題が大きくならないうちに適切な対処をすることが、健全な経営には大切だからです。
昨年9月、あるクリニックの院長から、フルタイム勤務の看護師(Aさん)が妊娠したという報告をいただきました。出産予定日は4月下旬。前々からAさんは妊娠を望んでいたのですが、なかなかかなわずにいたことは院長夫妻もよく知るところだったそうです。
遅刻、早退、欠勤でも給与が満額支給と知り…
その後、院長や事務長(奥様)から筆者に連絡はなく、特に気にしていなかったのですが、3月中旬に産前の休業に入るということで書類手続きなどの説明にお伺いすると、想定外のことが起こっていました。クリニック内で、他の職員がAさんのことを厳しく批判しているというのです。
Aさんは本来9時〜18時の勤務ですが、妊娠報告後は毎日のように出勤時刻が9時半から10時の間になり、具合が悪いといっては頻繁に早退したり、月に数回はお休みしてしまうようになったそうです。
医療機関では、一人ひとりの役割が他業種の職場以上に明確に決まっていますから、職員の突発的な遅刻・早退・欠勤は、他の職員にとって大変な負担になります。毎日の忙しい勤務の中での頻繁な人員不足は、職員の不満の要因になって当然です。
それでも、本人の気遣いやクリニックの適切な対応があれば、体調不良による思わしくない勤務状況も仕方ないと考えられたかもしれません。他の職員の不満が表面化したきっかけは、Aさんの遅刻・早退・欠勤中の給料が控除されず、満額支給され続けていると知らされたことでした。
このクリニックでは、それまで職員の妊娠、育児といった経験が全くありませんでした。院長は、初めての経験ということでAさんに対して腫れ物に触るような態度で接し、勤怠不良についても何も言いませんでした。事務長(奥様)は自身の出産経験から、過剰な気遣いは不要と思いつつも、院長の指示通り特に注意することなく対応していました。その間に、Aさんはわがままを聞いてもらうのが当然のことと勘違いして、好きなように振舞うようになってしまったのです。