トラブルの経緯

 西日本にある整形外科クリニックのA医院は、職員20人ほどが働く地元でも人気のクリニックである。

 医師、看護師のほかに作業療法士などの専門職が常駐し、リハビリテーションに力を入れており、年配者の来院でいつも混み合っている。職員が互いにプロとして認め合っているため、職場の雰囲気は良好なのだが、採用した若い職員が居着かないことを院長は訝しんでいた。

 ある日のこと、リハビリ助手として採用してから半年になるB子が退職を申し出てきた。B子は、母子家庭の母として2歳の子どもを育てながら働いていた。

 若く、やる気もあり、ゆくゆくはお金を貯めて理学療法士を目指したいと志望動機を熱く語っていた。退職理由を尋ねたが、言いにくそうに口をつぐんでいる。何かトラブルが起こっているのなら教えてほしいと重ねて尋ねたところ、意を決したように語り始めた。

無視しても頻繁にメールが…
 採用後、B子はリハビリ主任であるC男の下で、指導を受けながら勤務していた。C男は経験豊富で、患者からの評判も良く、クリニックになくてはならない存在だった。

 しばらくすると、C男はB子に対し、好意を抱いているかのような発言をするようになった。B子は知らぬ顔をしていたが、だんだんとエスカレートして、頻繁にメールが送られてくるようになった。B子は困惑しつつも、仕事に差し障りがあってはいけないと思い、そのような行為に対してきっぱりと断ることができなかったという。

 そんなある日、B子は「低周波治療器での治療を教える」ということで、昼休みにC男に呼び出された。昼休みには他の職員は休憩室で休んでいるため、そこには、2人以外の職員がいない状況だった。

 ひざの裏に電気をかけるので、ベッドにうつ伏せになるように言われ、そのようにしたところ、何やら妙な感触があり、体を起こしてみると、C男がふくらはぎにキスをしていた。あまりのことに驚いて、飛び起きたB子は、そのまま休憩室に逃げ込んだ。その後もC男からのメールは止むことはなく、C男は、B子も自分に好意を抱いていると勘違いしている様子だった。