院長は彼女たちに対し、Bの積極性を評価していると説明した上で、Bの態度については自分が話をしてみると伝えた。そして、職員間トラブルが業務に悪影響を及ぼすことが懸念され、また自分自身がBの意欲に応える形でアイデアを推奨する発言をしていたことから、本人の真意を確認してみようと考えた。
他の職員の想いをくみ取ってもらう
院長は、ベテラン職員らがBの言動に対して拒否反応を持ったのは、単にBが「言うことを聞かない」だけでなく、自分たちが来院患者を大切に考え、時間をかけて作ってきた診療所のやり方や仕事への想いを否定されたように感じたからではないかと考えた。
どちらも自分(たち)の取り組み方を蔑ろにされているように捉えてしまっては、一層感情的にこじれる可能性がある。そのため、双方の良いところを認めつつ、気持ちの折り合いを付けてもらうための方法を模索することとした。
Bとの面談では、本人の意欲や積極性を否定することがないように、周囲との関係悪化には触れず、まず良いアイデアが浮かんだかどうか、それをどのように具体化させるかについて、本人の主張を聞いた。Bのアイデアは様々な改善へのアプローチだったが、説明を聞いた上で、実現には明確なスケジュール策定、ある程度の資本投下や時間、何より周囲の先輩職員の協力がなければ難しいだろうという院長自身の見解を伝えた。
併せて、周りの職員らは自院と来院患者のために長く努力してくれた人たちであり、決してやる気がないわけではないこと、職場を良くしたい想いは皆同じであることを、過去の事例や今の先輩職員の取り組み方を紹介しながら説明した。さらに、今後は月1回をめどに院内全体で「改善ミーティング」を開催することを約束し、その中でBの積極性を生かしてもらうように協力を求めたのである。
その後、改善ミーティングは月1回の定例開催となり、Bだけではなく、職員それぞれから少しずつアイデアが出されるようになってきている。改善案は最終的に院長が了承する形となった。またB自身は、自分1人ではどんな改善も難しいことを認識した結果、「○○をやってはどうかと思っているのですが、アドバイスをお願いします」「今の形になったのはどうしてですか?」など周囲に配慮した発言もみられるようになり、先輩職員もBによる新しい視点の重要性を認めつつある。