院長はC子の退職後、別の職員との会話の中でC子の退職理由がSNSの書き込みにあるらしいということを聞き、ファミリーレストランでC子と面談。B子の書き込みが退職につながったことを確認した。

 だが、B子が投稿をした時間帯は勤務時間外で、職場にいたわけでもないことが判明。個人が勝手に自宅などで投稿をしたということで、かつ特定の誰かを名指ししたわけでもなかったため、B子には注意をしなかった。

 ところが、注意もしなかったことで、C子の本当の退職理由を知らないB子がまた職場の仲間についての悩み事を投稿。今度はD子が発見し、C子同様に自分のことを非難されていると認識してしまった。D子はそれまでもB子への不満を抱いており、このことが引き金となって退職してしまった。

 さすがに院長は、何らかの対応をしなければならないと思ったが、どう対処したらよいのか分からず困り果ててしまった。

今回の教訓

 このようなSNSを巡るトラブルは、決してまれなケースではなく、現実的に多くの医療機関で見られる問題だ。勤務時間中の投稿であれば、内容や頻度にもよるが「職務専念義務違反」を理由に何らかの制裁処分を考えることもできるであろう。

 しかし、勤務時間外でかつ自宅などでの書き込みであれば、労務管理が及ぶ場所や時間でもないことから、通常は注意・指導を躊躇してしまう。実際、職場の服務規律というのは、締結された雇用契約の範囲内に及ぶものであり、私生活のこうした問題は対象外となってしまうのが基本である。しかし、他方で無制限に認容してしまうと、職場の規律が保てないという問題も生じる。

 今回のような問題への対処としては、まず投稿をした本人を呼び出して、本人の言い分を確認することから進めたい。その際に、SNSへの投稿のことで呼び出されたのではないかと察知し、過去の投稿を削除して証拠を隠滅してしまうことも考えられるため、本人を呼び出す前に印刷をして記録は残しておきたいところだ。そして、こうした書き込みによって他の職員が気分を害する可能性があり、職場風土の悪化にもつながるということをきちんと伝え、改善に向けて指導をすることが必要である。