SNSでは本名を明かしていないケースも多いため、「これは自分の書き込みではない」と否定されることもあり得るが、院長が真摯な姿勢で指導をすれば、多くのケースで職員は最大限配慮するようになる。

 個別指導により問題が改善しても、職員の入れ替わりによって、また同じような問題が発生する可能性があることから、医療機関としては、独自にSNSについてのガイドラインを策定することをお勧めしたい。

 ガイドラインというと何やら難しい印象を持ってしまうが、少なくとも、SNSの利用に当たって、「やっていいこと」と「いけないこと」はまとめておきたいところである。例えば、プライベートな書き込みであったとしても、「職場の仲間や関係者のことは絶対に投稿してはいけない」「仕事の具体的な内容のことは書き込んではいけない」「勤務先のパソコンや貸与された携帯電話から投稿をしてはいけない」といったような内容が考えられる。

 とはいえ、SNSを十分に使いこなしていない院長にとっては、このガイドラインの内容を考えること自体、大変な負担となる。そのため、SNSのガイドライン策定に当たっては、職員をうまく巻き込むとよいだろう。SNSといっても、その範囲は幅広く、次々に新しいサービスが登場しているため、こうしたコミュニケーションツールへの感度が高い職員に意見を出してもらうと、比較的具体的な内容になることが多く、効果的だ。

 ガイドラインが策定されれば、全職員に配布をして、ガイドラインを遵守する旨の誓約書を提出させるという運用も考えてよいであろう。いかなるケースでも誓約書の効力が生じるかといえば疑問であるが、違反行為への心理的な抑止力につながることは間違いない。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
服部英治●はっとり えいじ氏。社会保険労務士法人名南経営および株式会社名南経営コンサルティングに所属する社会保険労務士。医療福祉専門のコンサルタントとして多数の支援実績を有する。