入職から間もない職員がトラブルを繰り返し、試用期間中などの早期の段階で辞めてもらわざるを得なくなることがある。本人としても働き始めたばかりであり、退職を勧奨しても、すんなりいかないことも少なくない。今回ご紹介する西日本の整形外科診療所でも、そんなケースが発生した。
この診療所では理学療法士の増員を検討し、新聞の折り込み、雑誌、インターネットなどの広告を出したものの、なかなか適した人材の応募がなかった。そんなとき応募してきたのが、実務経験約10年のAさんだった。
診療所の場合、経験10年程度のリハビリ職の求職者は、そう簡単には見つからないことが多い。早速院長が本人と面接することになった。院長の面接では特に気になるようなところはなかったとのことで、Aさんは採用となった。これまでに病院と診療所での勤務を経験しており、院長は、経験を生かしてリハビリスタッフたちの中心となってほしいと考えた。
患者を怒らせたAさんの対応
勤務開始1カ月後、スタッフから「患者の予約方法を巡ってトラブルが起きている」と院長に相談があった。Aさんが、今の予約方法より、自分が他施設で経験してきた方法の方が良いと主張しているのだという。
ここで筆者が介入することになった。Aさんには、勤務を始めてまだ1カ月であり、少なくとも3カ月くらいは業務経験をした上で、予約方法を再検討しようという話をした。
ところが1週間後、Aさんのリハビリの内容と予約日の件で患者さんが怒って帰ったと連絡があった。確認してみると、次回のリハビリについて自分の都合を優先して患者に指示をしたが、従わなかったことから「気にいらない」というような態度を取ったようである。話し方にも問題があるようだった。
仮に話の行き違いがあったとしても、患者が怒って帰るほどの対応や話し方は許されない。今後のこともあるので、今回の顛末に関する報告書を提出してもらうとともに、患者に連絡を取って丁寧に説明するように指示をした。その上で、「今後このようなことを繰り返さないように」と注意し、再び同様のことが起こるようであれば院長に厳重注意してもらうと話した。
1週間後提出された報告書は、自己弁護が半分以上の内容だった。自分は患者が怒ると思われるような態度は取ったつもりがないし、誤解された部分もある——といったことがつづられていた。だが、これは周囲で見ていたスタッフたちの証言とはだいぶ異なる。また患者に対して連絡を取ったかどうか確認したところ、留守電であったなどの理由で連絡をしていなかった。再度トラブル内容を確認し、報告書の再提出と、患者に連絡を取るように指示を出したが、コミュニケーションや協調性の面で違和感を覚えた。