許可申請書を事前に提出してもらう
 では、副業によるトラブルを防ぐため、経営者として普段からどんな対策を講じておくべきか。筆者が望ましいと考えているのは、副業の許可制の導入だ。(1)同業以外で働くこと、(2)副業の負担を過重なものとせず本業に支障が出ないようにすること、(3)本業においては職務に専念してしっかりと働くこと——を要件として、許可申請書を事前に提出してもらうのである。

 その際、どのような時間帯にどの事業所で働くのかも申告してもらい、許可を与えることで副業を認めるという運用となる。これは、職員の副業を含めた長時間労働によって健康を害すことがないように管理をするという、労働契約法第5条に定める安全配慮義務を果たす意味でも必要性が高い。同法第5条では、使用者は労働契約に伴い、労働者が生命、身体などの安全を確保しつつ労働ができるよう必要な配慮をするものとする、と規定している。

 経済的な理由でどうしてもお金が必要な職員がいるのであれば、副業をしてもらうのではなく、貸付金制度を導入するといった発想もあってもよいであろう。いずれにせよ、トラブルが生じないようなルールを設定した上で、副業をしなければならない理由を確認し、本人が無理なく働けるような運用をすることが、労使間の混乱を最小限にするものと考えられる。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
服部英治●はっとり えいじ氏。社会保険労務士法人名南経営および株式会社名南経営コンサルティングに所属する社会保険労務士。医療福祉専門のコンサルタントとして多数の支援実績を有する。