また、マイカー通勤に関して、「指定駐車場に車を停めていたところ、車上荒らしに遭って車内の金品が盗取されてしまった」とか、「誰かに傷を付けられてしまった」といったトラブルが発生することもある。駐車場を利用する患者や近隣住民とのトラブルも発生し得る。そのため、駐車場内の取り扱いについても、「マイカー通勤管理規程」としてまとめておきたい。

 例えば、「患者の駐車を優先して、職員は奥の方に詰めて駐車をすること」とか「駐車場内では大音量で音楽を聴かないこと」といった利用ルールを定めておくとよいだろう。診療所の中には、「指定駐車場内の事故や事件については、クリニックは責任を負わない」という規定を設けているケースもある。

 こうした規定は、特に法律で何を定めなければならないのかという基準はないため、マイカー通勤の許可基準(例:毎年運転免許証と、一定基準以上の任意保険に加入していることを示す資料等の写しを提出すること)や、上記のようなルールを網羅しておきたいものである。

 このようなマイカー通勤管理であるが、車に限らないことも視野に入れておかなければならない。最近、いろいろと問題になっている自転車も道路交通法では「軽車両」として扱われるため、マイカーと同じように管理をしなければならない。

 自転車についても様々な任意保険が整備されてきているため、そうした保険への加入義務付けは必須の労務管理として考えていくべきであり、従来以上に手間は増えるが、トラブルを予防する観点からも、しっかりとした体制の中で経営を行っていきたいところである。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
服部英治●はっとり えいじ氏。社会保険労務士法人名南経営および株式会社名南経営コンサルティングに所属する社会保険労務士。医療福祉専門のコンサルタントとして多数の支援実績を有する。