Illustration:ソリマチアキラ

 当社のフラッグシップ薬局は、応需処方箋が月に6000枚超、スタッフは薬剤師が13人と事務6人、備蓄医薬品が2600品目の大型薬局だ。

 かつて、この規模の薬局は、大病院の門前と相場が決まっていたが、時代は変わった。駅に近い立地で、月100軒以上の医療機関から処方箋を受けている。在宅にも積極的に取り組んでおり、まさに地域のかかりつけといえる薬局に育ってきた(育てたのはボク!!)。

 地域で信頼されて在宅の担当患者が増えるのは喜ばしいことだが、在宅に時間が取られると外来調剤に手が回らなくなる。

 お上は「無資格者による調剤は、まかりならん」と言いつつ、平気で「モノからヒトへ」と言う。もちろん人事担当者は躍起になって採用活動をしているが、薬剤師は集まらない。どうしても必要なときは派遣会社に頼んでいるが、その時給はなんと6000円!こんな高い時給を払って、薬をそろえるという単純作業をやらせるのはいかがなものかと思うのはボクだけではないだろう。

 しかしボヤいていても始まらない。“清水の舞台”から飛び降りる思いでPTPシート全自動払い出し機、いわゆるピッキングマシーンを買うことにした。この決断の背景には、別の薬局で水剤分注機を導入してうまくいったこともある。

 そこは耳鼻科の処方箋を1日に100枚程度応需する薬局で、薬剤師4人と事務2人で回していたが、水剤分注機を入れた結果、薬剤師3人で回せるようになったのだ。数百万円の機械が、ミスなく文句も言わず、薬剤師1人分の働きをしてくれる。「これからは機械化だっ!」。その思いを強くしたボクは、調剤機器メーカーに電話を掛けた。

 メーカーの担当者に念入りに調べてもらい、うちの薬局向けにカスタマイズ。いざ調剤室に設置しようとしたら、安普請の床では重さに耐えられないことが発覚して、床の補強工事までした。

 こうして、皆の期待を一身に背負ったピッキングマシーンがやって来た。張り詰めた空気の中、スイッチオン!おおおぉぉぉ。次々と薬をそろえたトレーが出てくる。当たり前だが、端数もきちんと数えられている。実はこのピッキングマシーン、涙が出るほど高かったのだが、それを忘れさせるほど感動的な光景だった。

 「これで皆がラクになる!」。喜びも束の間、薬の充填を促す赤ランプが点滅した。マニュアル通りに充填を済ませ、再稼働させた5分後、別の赤ランプが点滅。充填すると、すぐにまた別の赤ランプが……。

 結局、その日の午後は薬の充填に追われて終わった。翌日、朝一番でメーカーの人に来てもらい調整したが、事態は一向に改善されず、1人が四六時中、付きっきりで充填しなければならない。しかも、これまでは未開封の箱と調剤棚にある錠数を見て発注を管理していたが、ピッキングマシーンに入っている分も考慮する必要があり、事務スタッフから文句を言われる始末。

 試行錯誤の末、特定の処方箋のみに使用することにして何とか使っているが、半分眠っているようなもの。悔しいから、ボクがピッキングマシーンを導入したと聞いて「どう?使える?」と聞いてくる人には、「すごくいいよ、活躍しているよ!!」と答えている。

 最新機種は進化していて、1度に多くの薬を充填できるようになったと聞く。まだ当分残っているリース費用の請求書を眺め、ため息をつく。ハァ...社長はツラいのだ。(長作屋)