もっとも、これだけで自宅に持ち帰ったと決めつけるわけにはいかない。防犯カメラの設置作業をしたのは、ほかならぬBさんである。防犯カメラの位置を熟知しているBさんが、自分がカメラに映ることを分かった上で持ち帰るというのも考えにくい。院長は本人を呼んで、確認することにした。

 贈答品がなくなって防犯カメラを確認したところ、紙袋を抱えて出てくるあなたの姿が確認できた。大切な頂き物なので、所在を確認しなければならない。紙袋をどこに持って行ったのか教えてほしい——。

 院長が言葉を慎重に選びつつ尋ねたところ、Bさんは「すみません。もらってよいものだと思い自宅に持ち帰りました」と白状した。前述のように、贈答品のうちスタッフたちに渡すものについては付箋を貼っているし、そのことはBさんも知っている。なくなった贈答品には付箋を貼っていない。「もらってよいものだと思った」という言い訳には無理がある。

 「なぜ皆さんに最初に確認した時に話さなかったのですか?」と院長が確認したところ、「言い出せなかった」と話すだけで、後は「すみませんでした。弁償します」と言うばかりであった。院長は始末書を取り、二度とこのようなことを起こさぬよう注意した。

タイムカード不正などの問題が発覚
 だが、話はこれだけでは終わらない。この頃から筆者が非常勤の事務長として入り、Bさんの働きぶりをチェックするようになったのだが、いろいろな問題があることが分かってきた。

 Aクリニックではもともと、修繕や保守が必要な設備が増えてきたことを受け、自治体のシルバー人材センターからBさんに派遣で来てもらっていた。更新時期となり、シルバー人材センターに相談した上で直接雇用に切り替えた経緯がある。年齢は60代で、パートで週3日の勤務だった。

 院長としては、年齢が近くて話しやすく、気軽にいろいろなことを頼めるので重宝していた。しかし、院長の前では従順であるが、他のスタッフには高圧的な態度を取ることもあって、打ち解けることはあまりなかった。

 時には、休み時間を長く取り過ぎるようなこともあった。さらには、出勤後すぐに打ち合わせと言って出掛け、2〜3時間後に戻ってくることが何度か確認された。院内設備の保守や修繕が主な業務なので、外で打ち合わせをするようなことは少ないはずだった。打ち合わせはクリニック内で行うように指示をした。

 さらに、タイムカードでの不正が発覚した。仕事をしていない時間もしているように見せかけていたのである。これは他のスタッフも知ることとなり、さすがに居辛くなったようで、自ら退職届を出して退職していった。