その他、ルールが存在するのであれば記載しなければならない「相対的記載事項」というものもあり、以下が該当する。

1.退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法、ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
2.臨時の賃金等(退職手当を除く)および最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
3.労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる場合においては、これに関する事項
4.安全および衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
5.職業訓練に関する定めをする場合には、これに関する事項
6.災害補償および業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
7.表彰および制裁に関する定めをする場合においては、これに関する事項
8.その他、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

院長のメッセージを伝えるツールに
 就業規則は職場のルール集であるため、きちんと運用すれば規律の維持につながり、院長が毎回ルールを定めなくても済むようになる。「職員にこうあってもらいたい」というメッセージを明確にして職員に伝えるツールにもなり得る。また、内容や程度にもよるが、「こういったことを行うと雇用契約を解除する(解雇する)」というルールを具体的に示すこともできる。

 同時に、こうしたことが整備されていれば、そこで働く職員にとっても安心感が高まるものであり、定着率の向上につながることが期待できる。

 なお、就業規則を職員に開示しても、日常的に見ることはあまりない。そこで、就業規則の内容の中でも特に、普段の勤務において意識してほしい事柄(勤務時間、休暇取得のルールなど)を抽出し、分かりやすい形で「ルールブック」としてまとめておく方法もある(関連記事参照)。

 いずれにせよ、情報を容易に入手できる現在においては、隠し続けて職員を騙すような対応は逆効果となる。時代の流れであるという理解の上で、独自ルールを整備して職員に周知し浸透させることは、安定的な運営のために欠かせないものと考えていただければと思う。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
服部英治●はっとり えいじ氏。社会保険労務士法人名南経営および株式会社名南経営コンサルティングに所属する社会保険労務士。医療福祉専門のコンサルタントとして多数の支援実績を有する。