トラブルの経緯

イラスト:畠中 美幸

 今回ご紹介するのは、西日本の大都市部に立地する内科・消化器科クリニックの事例だ。

 日曜も診療するなどして住民ニーズに応え、開業3年目の時点で患者数は1日平均45人を超えて順調に推移。繁忙期には70人を超えていた。事務職員は、常勤に加えてパート3人の体制。繁忙期には事務3人が出勤し受付・会計を回すこともあった。

 ある時、パートスタッフが院長に有給休暇を取得できるのか質問した。労働基準法ではパートスタッフでも、6カ月勤務(8割以上勤務)すれば有給休暇が発生する。院長はそのことを知らなかったため、その場では回答せず知人のコンサルタントに相談してみた。

 コンサルタントが労基法に準ずる内容で回答したところ、「パートに有給休暇なんてあるの?」という反応。希望した日に休みを取得してもらっているのだから、「わざわざ有給休暇を使わなくてもよいのでは」と考えているようだった。コンサルタントが労基法の内容を説明しても、「自由に休みが取れているのに、なぜ有給休暇を要求するのか」と納得しない。「有給休暇を取るくらいなら、普段から休みの希望など配慮しなくてもいいのではないか」と憮然とした表情で語った。

繁忙期に2日間の有給取得を希望

 同クリニックでは、休暇希望の届け出は次の勤務表を作成する2週間前まで(なるべく早め)に提出することとしていた。パートスタッフについても、休みの希望があれば、あらかじめ休暇届を提出してもらい、できるだけの配慮をしてきた。

 前述のやり取りがあってしばらくして、別のパートスタッフAさん(40歳代)から有給休暇取得に関する相談があった。最初に有給休暇の取得の質問をしてきたパートスタッフから話を聞き、取得できるものなら利用したいと考えたようだった。

 Aさんは週3日(月・水・金・隔週土曜)、半日勤務。有給休暇は5日発生していた。Aさんの希望は、お子さんの受験のため、月曜から水曜まで連続3日間休みたいというもの。もっとも、火曜はもともと休みの日であるため、月曜と水曜について有給休暇を取得したいと希望した。

 ただ、その時期は繁忙期だったため、院長としては休んでほしくない。もともとパートに有給休暇は要らないのではと考えており、まして繁忙期にそれを取得されるのは納得がいかないという様子だった。院長は「業務に支障が出る場合は休暇日を変更できるルールがあったはずでは」とコンサルタントに尋ね、Aさんに対しても、有給休暇を取得するのは致し方ないが別の時期にしてもらえないかと打診した。