用紙代や電気代などの費用を診療所が支払っていることもあり、本来であれば、こうした私的利用の費用は本人にきちんと支払ってもらうべきだろう。とはいえ、「利用する人は事前に院長に許可を得ること」などといったような自己申告制にしたところで、早朝または業務終了後の誰もいない時間帯に勝手に利用するケースも考えられ、真面目に申告をした職員のみが実費を支払い、無断使用した職員が費用を支払わないといったような、正直者が馬鹿をみるという状況になることも想定される。

 そもそも、医療機関の労務管理の本質を考えると、職場内のコピー機を私的に用いることは厳禁とすべきだろう。それは、モラルやマナーの問題以前に、診療所では患者の情報をコピー機により印刷することが一般的で、個人のプライベートの書類をコピーしたところ、トレイに置き忘れた患者情報が入った書類も間違えて一緒に持っていってしまうリスクがあり、情報漏洩につながりかねないためである。

 従って、コピー機の前に「業務外の使用を禁止する」という張り紙をしたり、就業規則の服務規律欄に「職場のコピー機を業務外に利用してはならない」といった記載をしておくなどの対応は不可欠であり、その内容を周知しておきたい。

 同時に、こうした問題はコピー機に限らないことにも注意しなければならない。例えば、貸与している携帯電話やスマートフォンでプライベート利用をしたり、業務用の車で業務とは関係がない場所を訪問するようなことも考えられ、業務と業務外の線引きのルールを明確にしておくことをお勧めしたい。

 このようにルールが厳格になっていれば、万が一、業務外に勝手に利用する職員がいたとしても、うしろめたさを感じることになり、無茶な使い方をするケースは激減するだろう。そうした行為を見た他の職員が、当の職員に対して注意をしてくれるような効果も十分に期待できるのではないだろうか。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
服部英治●はっとり えいじ氏。社会保険労務士法人名南経営および株式会社名南経営コンサルティングに所属する社会保険労務士。医療福祉専門のコンサルタントとして多数の支援実績を有する。