Aクリニックの院長は今回のトラブル発生を機に、まずはSNSの利活用について様々な情報を収集し、知識を習得。その利便性を評価する一方で、クリニックというオフィシャルな場面で使う際に遵守すべきルールを作成することにした。

 SNSは単なる情報伝達手段ではなく、コミュニケーションツールであるという考えに立ち、下記の6項目を明文化した。
(1)全員をメンバーとする職場グループSNSは、基本的に平日の事務連絡にのみ用いる
(2)遅刻・欠勤の連絡にSNSを使うことは認めず、原則として電話で行うこととする。やむを得ず、第一報としてSNSで連絡した場合は、必ず後から電話で上席者の了承を得る
(3)クリニック内では写真を撮影しない
(4)クリニック内で知り得た情報は一切SNSに上げない
(5)個人を特定する情報(自分自身・他者を問わない)は書き込まない
(6)職員個人のSNSであっても、クリニックに関する話題、院内撮影画像は掲載しない

 この6項目を遵守することを全職員に誓約してもらい、今後新たに入職する職員にも自院のルールとして提示することを決めた。例えば、遅刻・欠勤の連絡は、SNSであれば会話がないままの一方的な報告になる可能性もあるが、電話連絡であれば状況を正確に確認し、業務の見通しを立てることもできるだろう。

 Aクリニックの院長は、就業規則や業務マニュアルなどを必要に応じて見直す必要があると考えていたが、実際、時代の変化に伴い、既存の規定やマニュアルではカバーできないような様々なトラブルの芽が出てくることを思い知らされる形となった。院長にとっては、現場で共に働く職員の印象や意見を聞きながら、育成し、職場環境の整備を進めていくことの大切さを再認識する機会となったようである。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
齊藤規子(株式会社吉岡経営センター)●さいとう のりこ氏。北海道大学大学院法学研究科修士課程修了後、法律事務所勤務を経て(株)吉岡経営センター(札幌市中央区)入社。人事労務、組織管理、経営改善など医療機関を中心に経営コンサルティングを手掛けている。認定登録医業経営コンサルタント。