イラスト:ソリマチアキラ

 仕事柄、ボクは様々な人と交流があるが、元来それほど人付き合いのいい方ではない。FacebookやLINEなどのSNSには、まるで興味がない。しかし、甥っ子に子どもが生まれて、Facebookで「友だち」になれば写真が見られるというので、それならばとアカウントを作成。その瞬間から、想像を絶する数の「友だち申請」が届いた。歴史の中に封印したはずの人や、ビミョーな友人からの申請もあり、何とも自分の性に合わず、とっととアカウントを削除した。

 が、その一瞬の間に、懐かしい人からのうれしい連絡も幾つかあった。その1人がGくんだ。彼は医療機器メーカーの営業マンで、MRだったボクと同じ病院に出入りしていて、しょっちゅう飲みに行ったりゴルフをしたりしていたが、ボクが会社を辞めて疎遠になっていた。

 早速、ボクたちは旧交を温め合った。彼は東京に住んでいるが、ときどき関西に出張してくる。「あの頃は楽しかったなあ」と、やんちゃをしていた頃の思い出話を肴に酒を酌み交わすのだ。そのGくんが、1カ月ほど前にとても腰の引けた声で電話をしてきた。「あのぉ……」

 聞くと、息子が就職活動中で、第1志望は製薬会社だが、大手薬局チェーンも狙っているという。ボクはその大手薬局チェーンの社長と、それなりに付き合いがあった。折しも文部科学省の役人が、その地位を利用して息子を医大に裏口入学させたニュースでもちきりだ。あぁ、ここにも子を思う親心あり。

 こういう話は早い方がいい。ボクは仕事の合間を見つけて、彼と息子に会いに出掛けた。息子は、とても素直な好青年だったが、押しの強さはなく、ハッタリも利きそうにない。就職活動で苦労しそうなタイプに思えた。話を聞くと、有名理工系大学に特待生で入学したのだが、成績が芳しくなく1年留年してしまい、現在4年生だった。

 これまでに、どの企業を訪問したのか聞いたところ、大学の就職セミナーで10社余りの話を聞いただけだという。うーむ。「なぜ、その薬局チェーンを志望したのか、ボクが面接官だと思って話してみて」と振ったところ、彼はニコニコとこう話し始めた。

 「実は僕、高校時代は医師を目指していて……」

 待った、待った〜! 医師になりたかったけど医学部に入れず、理工系大学に特待生で入ったけど留年し、(仕方なく)医療関係の会社に就職を考えている─。そもそも面接では、ネガティブな話をしたら絶対ダメなのに、彼は医学部を目指していたことを自分のアピールポイントだと思っている。ふぅ。

 ボクの特訓が始まった。積極的に薬局に勤めたい理由を、嘘でもいいから考えろ。そして、それを何度も口にして唱えろ。そうすれば、それが自分の言葉になるから─。面接の受け応えの指南に加えて、エントリーシートの添削もしてあげた。

 そんなこんなで、いよいよ彼の就職試験は今月末。最近、大手薬局チェーンは、理系学生の就職したい企業のトップ10に入るくらい人気になっているという。そもそもボクの口利きがどこまで通用するかも疑問だし、ボクの特訓もむなしく、彼が落ちるようなことになったら、Gくんは……。

 気付いたらボクは、ウチの会社の人事担当者に内線電話をかけていた。あー、放っておけばいいものを。また情けが顔をのぞかせる。(長作屋)