Illustration:ソリマチアキラ

 最近、周りの皆は、ボクのことを「随分丸くなった」と言う。決して体形のことではなく、性格のことだ。最近は、ちょっとやそっとでは怒らない。そんな温厚になったボクだが、最近、頭にきたことがある。それは医薬品卸の対応だ。

 調剤報酬に妥結率による減算ルールができて以来、卸の営業マンの価格交渉の態度たるや、目に余るものがある。期限切れを狙ってのらりくらりとかわす“牛歩戦術”に加えて、似たような数字を提示する“横並び戦法”を繰り出してくる。中小チェーン薬局で卸と価格交渉をする立場にある人は皆、感じていると思うが、最近の卸の営業マンは交渉にほとんど乗ってこない。

 例年、薬価改定の年は、4〜6月に購入した分の卸ごとのシェアを調べて、6月末に価格交渉を始める。今年も例年通り、後発医薬品と先発医薬品に分けて交渉をスタート。まず品目数の少ない後発品を主力後発品会社に絞り込むことで、早めに価格交渉のめどがついた。次に、先発品の交渉のために、主力卸4社に品目ごとに見積もりを依頼したが、まったくもって反応がない。

 「いやー社長、まだ価格が出せる状態じゃないんですよ」と、のれんに腕押しだ。それでも食い下がると「全体(全品目)で13.5〜13.7%程度ですかねぇ」とうそぶく。しかも、その数字は、各卸が口裏を合わせたように同じだ。

 ぎりぎりになって具体的な数字を提示してきたのはA社のみ。他のB社、C社、D社は「他社に合わせます」の一点張りで、ガンとして金額を提示しない。「談合じゃないか !」と詰め寄っても、「メーカーの仕切価や他の条件が同じである以上、どこも同じような値引率にしかならないんですよ」と、これまた判をついたように各社から同じ答えが返ってくる。幹事卸を決めて、それ以外の卸は手を出さないと裏で決めているんじゃないかとボクは疑っている。いや、絶対そうだ。

 旧知の友である社長の地域では、品目ごとの縦割り制になっているという。つまり、E製薬会社の製品は卸のF社、G製薬会社の製品はH社といったように担当卸が決まっていて、担当の薬については価格を提示するが、他社が担当する薬については価格を提示しないのだとか。

 彼らとやり取りしているうちに、だんだんバカらしくなってきた。どこに頼んでも、同じ金額で、同じスピードで、同じものが入ってくるのだから…。

 本来ならば、他社をいかに出し抜いて業績成績を上げるか、その駆け引きが営業マンの腕の見せ所のはず。そもそも営業職たるもの、売り上げてナンボ。そのための努力をせずして何が営業マンか!! 営業職をこよなく愛する元営業マンのボクとしては、腹立たしくて仕方がない。

 あまりにも頭にきたボクが思いついた秘策は、名付けて「そんなに横並びがいいのなら、思い通りにみんな横並びにしてやる大作戦」。現在、当社における主力卸4社のシェアは45%、35%、15%、5%。これを一律20%にしてしまうのだ。そうすれば、前年比を大きく割り込む卸は、さすがに目の色を変えて営業してくるだろう。不可侵条約を結んで、各社のバランスを保つことによって値崩れを防ごうとしたって、そうはさせない。

 いかに安く仕入れるかは薬局経営上の重要な課題であり、経営者の腕の見せ所だ。9月末まであと数日。よし、目にモノを言わせてやる!!(長作屋)