Illustration:ソリマチアキラ

 先日、あるドラッグストアを見学させてもらった。そこの社長とは旧知の仲で、10年前にも見学していたが、最近、別の友人から「とにかくすごいから、もう1回見た方がいいよ」と言われたからだ。

 近畿地方の片田舎にあるドラッグストアで、都会のドラッグストアのように洗練されているわけでもなく、OTC薬や化粧品はもちろん、食品から介護用品や下着まで、何でも置いてある。入り口近くに調剤スペースがあり、1日80枚程度の処方箋を応需しているという。

 3店舗のドラッグストアを経営する彼の会社には、薬剤師10人に対して7人もの管理栄養士が在籍していた。管理栄養士は医療事務を一切やらないという。では、何をしているのか。

 まず1つは、店内で売っている弁当の監修だ。といっても、「管理栄養士が作った」と全面的に打ち出すのではなく、カロリーや栄養バランスが考えられた弁当であることをPOPで示す程度。その方が売れるのだという。もちろん、POP作りは管理栄養士の仕事だ。

 さらに、管理栄養士が中心となって、有料会員制の健康クラブも運営している。会員には、歩数計や血圧計、代謝計測などが備わった健康管理端末を貸し出し、会員がその端末を薬局に持ってくると、管理栄養士による健康アドバイスが受けられるという。

 さらに会員は、管理栄養士が週1回開催する健康教室にも参加できる。ボクが見学に訪れた日の健康教室のテーマは「寒さ対策」。入社2年目の若い管理栄養士が、寒さ対策に関する講義を10分程度行った後、ショウガ湯やカプサイシンのサプリメントなど店内の商品を説明し、「よかったら買って帰ってくださいね~」と爽やかに紹介した。これが売り上げ増に大いに貢献しているという。

 続いて体操の時間。店舗の一角にヨガマットが所狭しと敷かれ、管理栄養士の「イチニッサンシ、ニイニッサンシ」という掛け声に合わせて、20人ほどがヨガマットの上で体を動かした。

 体操後に3、4人で談笑している高齢女性に声を掛けてみると、彼女たちはここで知り合った仲間だという。毎週この教室に参加して、その後は皆でランチに出掛けるとのこと。オバサマ方いわく「ここで元気をもらっている」のだそうだ。

 同社では、管理栄養士が医師の指示による居宅療養管理指導も行っていた。

 説明してくれたベテラン管理栄養士は最近、膵臓癌が進行し、食欲低下で痩せてきた患者を担当したという。体重を2kg増やすことを目標に摂取カロリー量を計算して、本人が好んで食べられそうなメニューを考え、患者宅で調理しながら説明したらしい。そのかいあって患者の体重は900g増えたが、病状が進行し、先日亡くなられたという。

 生活に密着して患者に寄り添ったケアを実践している様子が伝わってきた。

 病気の予防から看取りまで、管理栄養士を活躍させることで、こんなにも薬局の機能を高めることができるなんて!! ボクは何をやってきたのだろう。正直言って、10年前は大したことはないと思ったが、今度ばかりは彼に完敗だ。

 うちの薬局にも管理栄養士は何人もいるが、医療事務がメインで、活躍の場は年に数回開催する健康フェアだけ。しかも、来局者にその存在すら知られていない。

 薬局の在り方が大きく変わろうとしている2019年、やらねばならぬことがあり過ぎる。(長作屋)