今年のお正月、のんびりお酒をたしなみながら、社長さんらしく、薬局ビジネスの来し方、行く末を考えた。
企業が発展する上で大切なものは何か。それは「その場所や時代に適合したビジネスモデル」である(お、ちょっと社長らしい?)。どのような企業でも、「まずはビジネスモデルありき」だ。ビジネスモデルが時流に乗っていて、それなりにイケていれば、収益が得られ、それを再投資することで企業は成長する。企業規模が一定以上になるまでには、ある程度の時間が必要だ。
問題は、その時間の経過と共に、基となったビジネスモデルが陳腐化することだ。今の薬局ビジネスは、まさにその問題に直面しているのではないか。医薬分業は、医療費抑制や薬物療法の安全性向上につながると信じて、ボクたちは処方箋調剤を追求してきた。それが今や、“調剤薬局”は世の中から全否定され、方向転換を迫られている。
実際、処方箋単価は下がる一方だ。もはや従来通りに薬局を経営しても利益が出ない。これは、ビジネスモデルが既に陳腐化していることの査証だ。
昨今、「薬局はネット販売に凌駕され、薬剤師の仕事は人工知能(AI)に取って代わられるのでは」と心配する向きもあるが、ボクはそうは思わない。
ネット通販会社は、想像を絶する量の顧客情報を持ち、セグメント化した顧客の行動を予想し、先回りして新たな提案をすることで購買につなげることに長けている。しかし、彼らが持つ顧客情報は決して深くない。
例えば、ボクが社長であることやお酒が好きだという情報は持っていたとしても、海よりも深く、山よりも高く、薬剤師を愛しているなんてことは、奴らには分からない。
それに、薬局ビジネスの主要ターゲットである高齢者には、時間がたっぷりある。専門家が時間をかけて親切に対応してくれる近所の店舗を選ぶのではないか。
医療におけるAIもしかり。一人ひとりの患者とコミュニケーションを取りながら症状や悩みを聞き出し、どうしたいのかを考慮してベストの治療法を考えたり、患者が納得できるように説明する力は、人間が勝るだろう。もちろん時代が進めば、AIがやってのける日も来るだろうが、それはもう少し先のことだろう。
そう考えると、薬局が生き残るためのポイントは2つ。
1つは、個別性を重視したサービスであること。同じ薬が処方されている患者に、金太郎あめのように同じ説明をしていては、機械には勝てない。個々の患者の深いところに寄り添うことが大切だ。
もう1つは、あくまでも薬学的知識に基づいたメディカルサービスであること。薬剤師が薬学的知識に基づいた専門的なアドバイスを、タイムリーに提供できれば、ネット通販やドラッグストアに勝てるはず。
よしっ、大胆に薬剤師の業務を見直すぞ !!
そんな思いも冷めやらぬまま、仕事始めの1月4日に薬局に出向いたら……。来る患者、来る患者、全員に薬剤師が「かぜの季節ですから、手洗い、うがいを徹底しましょう。手洗いの方法は……」と説明していた。聞くと、皆で話し合って、健康サポートの一環として声掛けすることに決めたという。
もちろん大切なことではある。しかし、そこには個別性も専門性も感じられない。これでアマゾンに、AIに、本当に勝てるだろうか……。
うーむ。にわかに不安になってきた。(長作屋)