Illustration:ソリマチアキラ

 ボクの会社は、3年ほど前から予算を組むようになった。今年はその予算が立たない、つまりいくら計算しても黒字にならない。困った……。

 昔は、予算を組む(=経営計画)なんて、銀行にお金を借りるときの事業計画くらいしかなかった。そんなことをしなくても、新たな店舗をオープンさせさえすれば、会社の経営は問題なく回っていたからだ。

 実は、店舗をオープンするとキャッシュフローが良くなる。というのも、薬局の場合、収入と支払いに時間差があるからだ。オープンした瞬間から患者の自己負担金が“日銭”として、翌月からは保険者からの調剤報酬が入ってくる。一方、仕入れた薬の支払いは3カ月後であることが多く、2~3カ月分近くの収入が手元に現金で残る。それが次の出店資金となり、出店すればするほど資金繰りが楽になる、という具合だった。

 経営計画なんて立てる暇があるなら、新たに薬局を出すことを考えた方が良かったのだ。それが今や、店舗の出店開発はかなり難しくなった。

 面の処方箋を増やす努力をしても、処方箋枚数はちっとも増えない。にもかかわらず、薬価改定の影響で処方箋単価はどんどん下がっている。ちょっとくらい調剤報酬が上がっていても、薬価が下がれば売り上げは減ってしまうのだ。

 そこには後発医薬品の調剤比率が高いことも大きく影響している。後発品は薬価差益が少ない。ボクたちは、後発医薬品調剤体制加算を算定するために、一生懸命に後発品の比率を高めてきた。国民医療費のことを考えれば、後発品の使用促進は大切なことだが、薬局経営的には一生懸命頑張って、自分たちの実入りを減らしたことになる。

 さらに、薬剤師不足のために膨らむ採用経費と人件費も重くのしかかる。

 ちょっと前まで、応需処方箋枚数を増やす一番の手段は、在宅の処方箋を獲得することだった。2025年問題の解決に向けて薬局は在宅医療に携わるべきという思いも強かったが、処方箋枚数を増やす方法として魅力的だったのも確かだ。しかし在宅は現場の負担が大きく、薬剤師を増やそうにも採用できない昨今は、在宅の処方箋を積極的に取りにいけないのが現実だ。

 何度電卓をたたいても、どう考えても、売り上げ予算が1億円ほど足りない。社長としての経営手腕が問われる。ピンチだ。さぁどうする、長作屋 ! うーん、うーーん、うーーーん。

 ぴっかーん ! ひらめいた ! ! その名も「年間売り上げを1億円アップする方法」。売り上げを1億円上げるためには、処方箋平均単価が1万円として、1万枚の処方箋が必要だ。25店舗ある薬局のうち、外来の処方箋枚数が1日50枚を超えている23店舗を対象に考えると、1店舗当たり約435枚、月36枚だ。

 ひらめいたのは、これまで閉店していた平日と土曜日の午後に営業すること。平日午後に5枚、土曜日午後に4枚の処方箋が応需できれば、月36枚になる。うちの薬局は面の処方箋が2割以上だから、営業さえすれば半日で4~5枚くらいの処方箋は応需できるに違いない。

 店舗単位で計算すると人件費は増えるが、会社全体でシフトを組み直せば、人件費が増えることもなさそうだ。

 何と簡単な話じゃないか。さっそく明日、皆に声をかけてみよう。半日にたった4~5枚で1億円 ! やっぱりボクは社長さんだ。 (長作屋)