Illustration:ソリマチアキラ

 先日、久しぶりに米国に行って驚いた。なんと、街にタクシーがいないのだ。聞くと、Uber(ウーバー)が普及して、タクシーは激減したという。

 恥ずかしながら、ボクはUberを知らなかった。きっと知らないのはボクだけじゃないと思うので説明するが、Uberとは、米国ウーバー・テクノロジーズ社が運営する自動車配車ウェブサイトおよびアプリのこと。一般人が、空いている時間に自分の車でタクシーのように人を運ぶのだ。利用者は、スマートフォンのアプリを使って車を手配する。現地で何度か使ったが、確かに便利だ。

 普通なら、知らない人の車になんか絶対に乗らない。しかし、客も運転手も、相互に評価される仕組みになっていて、利用しても大丈夫な車であることを評価システムが証明してくれる。

 そう説明してくれた通訳の女性の夫も、Uberの運転手をしているという。「以前は仕事から帰ってきたら釣りに行っていた夫が、最近は『Uber行ってくる』と言って出掛けていくの。小遣い稼ぎにいいみたい」。それくらいUberは人々の生活に溶け込んでいた。

 日本では、自家用車による輸送サービスが法律上認められていないので、Uberは普及していない。しかし、意識して街を見渡すと、背中に緑や黒の四角いリュック(?)を背負って自転車で疾走している輩がいる。そう、日本では一般人が飲食店の料理を顧客に運ぶUber Eatsが、急速に普及しているのだ。日本には、もともと“出前”の文化があるから受け入れやすいのだろう。人々は手軽に出前が頼めるようになったし、飲食店は店舗に来られない顧客にも料理を届けられて収入アップにつながる。配達人は自転車とスマホがあれば、空き時間をお金に変えられる。

 ん?んんん? これ、使えるやん! !

 ボクは近い将来、保険薬局はオンライン服薬指導に取り組む必要が出てくると考えている。オンライン診療が普及すれば、服薬指導もオンラインで行うのが当然という時代が来るだろう。

 振り返れば20年ほど前、薬局業界では医療機関の門前の土地を巡って、し烈な争いが繰り広げられた。まさに陣取り合戦で、資本のある会社が勝者となり、メガチェーンへと育っていった。

 陣取り合戦の終焉(しゅうえん)とともに、在宅患者を巡る戦いが勃発。この戦いは立地よりも薬剤師の質が勝負を分けるから、中小企業でも工夫と努力で戦える、と思っていたら今度は敷地内薬局。これまた資本力がモノをいう。そんな変化の激しい時代に“下克上”が果たせるとしたら、オンライン服薬指導なんじゃないか、と考えたわけだ。

 最近の若い薬剤師はすぐに適応できそうだが、問題は薬の配送。人を確保し、社用車を用意して配送するとなると、とてもソロバンが合わない。ドローンが運ぶなんて、住居が密集している日本ではあまり現実的ではない。

 そこで、Uber Eatsならぬ、Uber Drugだ! 本人以外は開けられない薬箱を作って運んでもらえばいい。自転車で配達するという地域密着な感じもいい。こりゃ、名案!僕は小躍りした。

 しかし、法律的に可能なのだろうか。いや、厚生労働省がいい顔はしないに違いない。うーん。でも、そこは、きっと、誰かがなんとかしてくれるんじゃないか。どうだろう、この名案。まずは特区で採用してくれないかなぁ? (長作屋)