Illustration:ソリマチアキラ

 2022年度調剤報酬改定に向けて周りが騒がしくなってきた。近年は、改定に合わせて、取れる点数をしっかり取っていかないと利益が出なくなっており、少しでも準備を進めるために、社内は今から落ち着かない。

 経営を考えると力を入れざるを得ず、全社挙げて取り組んでいるものの、最近は、それらはしょせん小手先の対策であり、本質はそこではないと感じている(現場で一生懸命やってくれている社員には申し訳ないが)。

 では、本質は何か。それは患者からいかに選んでもらうか、だ。小売業として売り上げを確保するには顧客から選ばれることが基本だ。加えて薬局の場合、継続的な薬学管理を実践する上では、その患者に来局し続けてもらうことが前提となる。疾病管理上も通い続けてもらうことが何よりも重要だ。

 3年ほど前から、ボクは生活習慣病で近所の某クリニックに通っているが、そこのスタッフは、いつも「長作屋さん、こんにちは。最近寒いですね」などと名前を呼んで話し掛けてくれる。そして毎回、次回の受診予定日が書かれた紙と、「お薬は〇月〇日までですので、それまでに必ず受診してください。お待ちしていますね」と優しい笑顔で処方箋を渡してくれる。

 年に2回ほど血液検査をするが、医師は、結果票の腎機能を示す数値の横に「問題なし」、肝機能の数値の横には「すばらしく良し」などと手書きしながら説明してくれる。ボクは、お酒をよく飲むが肝機能は悪くない。実はひそかにそのことが自慢だが、医師はそれを大いに褒めてくれる。

 一方、薬をもらっている門前の大手チェーン薬局は実に事務的だ。名前で話し掛けられた記憶がないし、ちっともフレンドリーじゃない。先日、「検査結果、見ますか」と聞いてみたところ、薬剤師はとてもうれしそうに「コピーさせてもらっていいですか」と言ってくれた。ボクもうれしくなって「どうぞ、どうぞ」と渡した。だが、それだけだった。腎機能や肝機能は問題ないですね」といった言葉もなければ、「肝機能とてもいいですね」という一言もない。そもそもボクがお酒好きだということすら知らないだろう(聞かれたことがない)。この薬局に通い続けていいのだろうかと、最近は思うようになっている。

 ところでボクの薬局は大丈夫だろうか。不安に思い、新しく作った薬局である提案をした。慢性疾患の患者に「お薬は〇月〇日までの分ですので、それまでに受診してくださいね」と話す。そして、日本中の薬局の合言葉である「お大事にどうぞ」の代わりに、優しい笑顔で「お薬を用意してお待ちしていますね」と伝えることにしようと。

 すると、さすがボクの会社の薬局長!「処方日数から計算して、その週に来局予定のある患者リストも作りましょう。それを調剤室に貼っておけば、来局されたときに『そろそろお薬がなくなる頃だと思っていました』とお声掛けできますよね」と反応してくれた。グレイト!

 そうやって患者と交流すれば、フォローアップにも身が入るし、来局予定日を過ぎて患者が現れなければ気にもなるだろう。患者にとっても、薬剤師の顔が浮かべば薬を飲む意欲につながるだろう。選ばれ続けるためには理由が必要だ。「お待ちしています」、その気持ちが大切なんだと思う。(長作屋)