Illustration:ソリマチアキラ

 30年来続いた薬局のビジネスモデルが終焉(しゅうえん)を迎えつつある──。最近ボクはそう感じている。

 ボクが薬局を経営し始めて以来、長い間、薬局経営における最大のポイントは、医療機関のできるだけ近い土地を押さえることだった。医療機関から最も近い薬局の応需処方箋枚数を100枚とすると、2番目の薬局は60枚、3番目薬局は36枚といった具合に減っていく。ボクはこれを「立地6割減の法則」と呼んでいたが、かつては面白いほど、この法則が当てはまっていた。

 それゆえ大規模病院前の土地は高騰し、資本力の乏しい小規模チェーンは有利な場所への出店が難しくなり、結果的に大規模病院門前は大手チェーン薬局が占めるようになった。その後、門前薬局の集中率は少しずつ下がったものの、それでも病院門前は好立地であることに変わりはなかった。

 それが、突然のルール変更によって敷地内薬局が誕生し、門前薬局が大打撃を受けた。そうこうするうちに、新型コロナウイルス感染症の流行拡大や、それに伴うオンライン診療・服薬指導の規制緩和によって大規模病院に足を運ぶ患者が減り、その門前の薬局はさらに厳しい状況に追い込まれた。

 そしてリフィル処方箋の解禁である。今のところ大きな影響は受けていないが、かつて一般名処方がたった2点のインセンティブで普及したことを考えると、リフィル処方箋も政策次第では増えそうだ。そうなれば患者が医療機関に足を運ぶ機会は減り、広域から患者が集まる基幹病院前の薬局はますます厳しい状況に陥るだろう。そんなこんなで、ほんの十数年前には皆がこぞって狙っていた大規模病院門前の薬局が、今や経営的に最もリスクの高い薬局となってしまったのだ。

 一方、街中にある薬局にも変化の波が押し寄せてきている。先日、60代後半の知人が、花粉症で耳鼻咽喉科のオンライン診療を受けた。彼は、別の医療機関で生活習慣病の治療も受けており、長作屋薬局を利用してくれている。普段は、対話アプリ「LINE」で薬局に処方箋を送り、その後に車で薬を取りに来るというスタイルだ。

 オンライン診療では、医師にどこの薬局を利用するか聞かれたらしい。長作屋薬局を指名したが、医師が使っているオンライン診療システムの薬局リストには名前がなかった。そこで、当薬局のホームページを見たが、処方箋の受付メールアドレスがなかなか見付からなかったという。やっと見つけたメールアドレスに医師が処方箋情報を送り、その数時間後に彼がいつものように薬局に薬を取りに来た。しかし、事もあろうに、薬局スタッフはメールが届いていることに気付いていなかった……。

 うちだって、LINEで処方箋を受け付けたり、オンライン服薬指導も行っていて、時代を追いかけているつもりだった。しかし、実際は我が長作屋薬局は薬局DX(デジタルトランスフォーメーション)に全く乗り遅れていたのだ(とほほ)。

 これまでは、「事業拡大=好立地に薬局を建てること」だったが、そうではなくなりつつある。「お薬は、渡した後が勝負」と誰かが言っていたが、「薬局は作ってからが勝負」という時代にようやく突入したと言えそうだ。面白い時代になりつつある。勝負はこれからだ!社長の腕を見せてやる!(長作屋)