Illustration:ソリマチアキラ

 ボクの会社は、しばしば組織を変更し、さほど多くない人材を動かしている。

 ボクが薬局を始めた25年ほど前は、医薬分業率は30%に満たず「作れや、増やせや」の時代。新店舗を作る上では社内のスタッフを昇格させて薬局長にしていては間に合わず、その都度、管理薬剤師を募集して、そのまま薬局長のポストを担ってもらっていた。

 当時は「組織」と呼べるようなものはなく、ボク(社長)の次は薬局長も、ともすると他の薬剤師もみんな並列だった。店舗数が増えてボクが全体を把握しきれなくなり、ピラミッド型の組織を作ったのが15年ほど前。当初は部長、課長(エリアマネジャー)、係長(薬局長)とシンプルな組織だった。それが今では部長の下に部長代理、次長、課長、課長代理、エリアマネジャー、係長、主任…と、やたら役職が増えている。

 それには理由がある。近年は、新店舗を増やすには限界があり、故に薬局長のポストが足りなくなったのだ。つまり、昨今の組織改編の狙いは、将来、要となりそうな人材のポジションを作り、活躍してもらうためが多いのだ。

 ボクが昔勤めていた外資系製薬会社では、支店長(部下約100人)の下にブロック長が5~6人、その下にチーム長がそれぞれ5人程度(部下4~5人)といった組織で、メンバーは入れ替わるものの、枠組みそのものは10年以上変わらなかった。ボクは、27歳の4月に4人の部下を持つ最年少チーム長(係長)になった(ちょっと自慢!)。主力製品の売り上げ目標(今では予算と言うが)が決められ、チームと個人の達成率で成績が決められる。みんな目標達成のためにしのぎを削り、昇進や給料アップを狙っていた。

 組織とはそういうもので、会社員たるもの、上のポストを目指して頑張るものと信じていた。しかし、時代のなせる業なのか、薬剤師という職種、あるいはライセンスホルダーの特徴なのか、期待をかけてポストを用意し、上昇志向をあおっても、上のポストを目指さない人が多いのだ。

 一方で、組織運営を担える人材が育たないのも悩みの種だ。クリニックの門前薬局の薬局長として、医師とコミュニケーションを取りながら、現場を仕切るのは抜群にうまいが、エリアマネジャー、課長、部長として会社全体の運営に関わらせようとすると途端に力を発揮できなくなる薬剤師が少なくない。

 部長や課長でありながら、人が足りないときのヘルプ要員として店舗を飛び回っている人もいる。それはそれで必要だが、そのクラスの人材に求められるのは、複数店舗のスタッフの最適化や医療サービスの質の向上、さらにはエリアでアピールして多職種と連携するなど、長作屋薬局の価値を高めることだ。そして、多くの患者さんのお役に立てるように(処方箋も持ってきてもらえるように)なるにはどうすべきかを考え、実践することだ。上のポストに就くことで、そうした役割を少しでも意識し、モチベーションを高めてほしいと考えて組織の再編成を試みるが、どうもそれがうまくいっていないようだ。

 先日、ある部長代理から「組織変更し過ぎですよ」と言われた。「キミに歩んでもらいたい出世の道を作るために変更してるんだけどなあ……」と、喉まで出かかった言葉をグッとこらえた。(長作屋)