Illustration:ソリマチアキラ

 先日、いつも利用する大手チェーンのA薬局に処方箋を持って訪れたボク。前回(1カ月前)受診時の血液検査の結果表を手に持っていたら、担当した薬剤師から「検査結果、見せてもらってもいいですか」と言われた。うれしくなって渡すと、「コピーを取ってもいいですか」と薬剤師。ボクが「どうぞどうぞ」と言うと、薬剤師は「ありがとうございます」と言うや否や調剤室に消え、スキャンかコピーをしたのだろう、戻ると同時に結果表を返してきた。

 以前にも似たようなことがあったが、今回ボクは思い切って「検査値、しっかり見てくださいよ」と言ってみた。すると薬剤師は、ボクの言葉に恥じる様子もなく、結果表に目を通した上で「大丈夫ですね、先生も問題ないと書いています」とニッコリ微笑んだ(なかなかの対応だ)。受診時に、医師が説明し結果表に「OK」と書いてくれていたのだ。

 だが、医師に聞き損ねたのだが、実は赤血球が基準値より高かった。そこで「赤血球が高いですが、高いとどういう病気が考えられますか」と尋ねてみた。すると「少し高いですが、このくらいなら大丈夫ですよ」と即答。いやいやそうではなく、赤血球値が高い時に考えられる疾患は何かと聞いたのだが……。

 しつこく聞いてイヤな患者だと思われるのも心外なので、おとなしく帰って調べたところ、赤血球増加の原因として比較的多いのは脱水などの他、睡眠時無呼吸症候群や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などによる低酸素があると分かった。ボクはこれらの疾患には該当しないが、そういえば1カ月ほど前、夜中に息ができないほど激しく咳込むことが何度もあったのを思い出した。採血した頃であり、「そのせいかも」と思うと納得できて少し安心した。

 それはともかく、薬剤師の対応である。知識不足は仕方がないが、採血した時期の体調を聞いてくれたり、患者の疑問に「次回までに調べておきます」と言ってくれれば、患者は「次もこの薬局に来よう」と思うだろう。

 別のある日、今度は泌尿器科の処方箋を持って、他の薬局を訪れた。そう、ボクの年代の男性の多くは前立腺肥大による頻尿に悩まされている。幸い前立腺は手術が必要なほど肥大しておらず、α1遮断薬と頻尿治療薬としてβ3作動薬が処方された。

 薬局では、親切そうな男性薬剤師が薬の説明をしてくれて、「このお薬(α1遮断薬)は血圧が下がることがあるかもしれません。血圧のお薬は飲んでいませんか」と聞いてくれた。ボクの血圧は130/85mmHg程度で、今のところ降圧治療は受けていない。そう話すと「少し血圧が下がってちょうどいいかもしれません」と安心させることまで言ってくれた。決して悪い対応ではないが、なぜそこで終わらせてしまうのだろうか。

 その薬局には血圧計が置いてある。「ここで毎回血圧を測ってみませんか。私が見ますよ」と、なぜ話せないのだろう。これをきっかけに血圧測定を促すことで、薬の副作用のフォローアップもできるし、何よりボクのこの先の健康管理にもつながる。さらに、ボクがこの薬局を利用し続ける理由にもなる。そうなれば自身のやりがいにもつながるだろう。

 薬剤師よ、もっと患者の心をつかむ術を学ぼうではないか。患者のために、薬局のために、そして自分自身のために。(長作屋)