トラブルの経緯

※写真はイメージです。

 地方都市の皮膚科のビル診療所、Aクリニックは、開業後順調に患者数を伸ばしており、開業から5年ほどたった時点では、院長1人では対応できない患者数となっていた。

 院長は週に1回、前勤務先の病院に非常勤で勤務しており、診療日をこれ以上増やすのは難しい。そこで院長は、常勤医師の雇用を決断。人材紹介会社経由で男性医師を採用し、副院長として処遇することにした。

 給与については、固定給プラス保険点数に応じた歩合給を支給。2診体制にするため、ビル内の隣の部屋を新たに賃借したが、レイアウトを大幅に変更することが予算上難しかったため、院長と副院長が診療する場所が離れてしまう形となった。また、副院長からの要望で、プライバシー配慮のため診察室を完全な個室にした。こうしたレイアウトを採用したことが、今回紹介する問題を生んだ一因になったのかもしれない。

複数の職員が精神科、心療内科に通う事態に
 院長が異変に気づいたのは、開院当時から勤務していた職員が、体調不良をきっかけに退職したときのことだ。欠勤が多かったわけではなかったが、勤務態度に明るさや、はつらつさがなくなっていた。

 精神疾患の診断書が提出され、すぐに退職したいとの申し出があったので、即日の退職を了承せざるを得なかった。

 それから約1カ月後、別のパート職員が入院し、1カ月の休みを申し出た。2年間、毎週末に遠方の実家に戻って両親の介護をしながらの勤務であり、疲れがたまって入院することになったと報告を受けた。

 休職期間が切れる1カ月後、本人から「仕事を続けることができない」という内容の手紙が届いた。退院はできたが、引き続き心療内科の医師によるカウンセリングが必要で、外出も近隣しかできず、「直接退職の挨拶に伺えなくて申し訳ない」というおわびが書かれていた。

 この手紙を読み進めた院長は驚いた。副院長のパワーハラスメントが原因で心療内科のカウンセリングが必要になったことと、副院長にパワハラを受けている職員の名前が記載されていたのだ。

 後日院長は、スタッフたちに、このパート職員が退職することを報告した。そうしたところ、手紙で「パワハラを受けている」として名前が挙がっていたスタッフの1人から、「私も辞めます」と自己都合退職の申し出があった。