2014年に2度廃案となった改正労働派遣法が、2015年9月30日から施行されています。かなり大幅な改正となりましたが、残念ながら、現場の管理者や当事者の派遣スタッフの方々にはまだ十分に浸透していないようで、改正内容を誤解されているケースも少なくありません。そこで今回、改正法について医療現場から受けることの多い質問内容と、それに対する答えをまとめてみることにしました。

 Q&Aに入る前に、医療現場での労働者派遣に関する基礎知識を整理しておきましょう。

 派遣と混同しやすいのが「人材紹介」です。人材紹介では事業者(医療機関など)が直接雇用し、事業者側が雇用に関する全ての責任を負うのに対し、派遣の場合は派遣元(人材ビジネス会社)が派遣労働者を雇用しているのが大きな違いです。派遣先は、派遣労働者を指揮命令する権利だけを派遣元から借りる形となります。

 対象職種と業務については、医療機関が医師や看護師などの医療専門職(医師、看護師、薬剤師、理学療法士など。事務職は含まない)を派遣労働者として受け入れることはできません。ただし、例外として(1)紹介予定派遣、(2)産前産後休業、育児休業などの代替要員としての受け入れ——は認められています。また、医療機関や介護老人保健施設など以外の事業所(例えば特別養護老人ホームなど)であれば、看護師などの医療職を派遣で受け入れることができます。

 この点を踏まえた上で、まずはスタッフの方々から受けることが多い質問の内容を見ていくことにしましょう。

 A1 3年経てば必ず期間満了で退職し、他の事業所に転職しなければならないわけではありません。状況次第では、今の事業所で派遣労働者として働き続けられなくなることもありますが、その場合でも、派遣会社が次の就業先確保に尽力することが義務付けられています。

 改正派遣法では、派遣受入期間制限の考え方が大きく変わりました。改正前は、派遣先で従事する業務の種類によって期間制限が決められていました。いわゆる政令26業務(OA機器操作など)は期間制限なし、それ以外の業務は原則1年、最長3年を上限としてきたのです。

 しかし、今回の改正で、従事する業務の種類ではなく派遣労働者の雇用形態によって期間制限を決めることになりました。派遣会社で期間を定めて雇用される(有期雇用)場合、同じ職場で3年間の上限が定められ、雇用期間の定めがない(無期雇用)場合は派遣の期間制限がなくなったのです。この3年のことを「派遣労働者単位」といいます。