今回の改正は、不本意ながら派遣を選択した有期雇用派遣労働者について、3年一区切りでキャリアを振り返り、キャリアアップの契機とすることで派遣労働への固定化の防止を図ることを目的としています。

 3年の制限を設ける職場の単位を「同一組織単位」といい、いわゆる「課」を1つの単位として設定します。もちろん様々な組織形態があり「課」が存在しない場合もありますので、そのような場合は、業務の指揮のあり方から判断して、ある程度まとまりがあるグループを設定することになります。大規模な医療機関であれば組織図の課が組織単位になり、全ての指示を院長が行う小規模なクリニックなどでは、クリニック全体で1つの組織単位となります。

 3年に達する際に、派遣労働者が継続就労することを希望する旨を派遣会社に伝えた場合、派遣会社は以下の4つの雇用安定措置を講ずる義務を負っています。

1.派遣先に直接雇用を依頼する
2.他の派遣就業場所を紹介する
3.派遣会社で派遣以外の仕事(営業など)で無期雇用する
4.直接雇用に結び付く職業紹介や教育訓練などの措置をとる

 派遣労働者が派遣先医療機関での直接雇用(上記の「1」)を希望したとしても全てのケースで直接雇用されるわけではありませんが、そのような場合は「2」により別の派遣先を紹介することになっています。

 ここでのポイントは、期間制限は課を単位としてかけられているので、同じ派遣先医療機関でも別の課であれば派遣就業を続けることができるという点です。

図1 3年を超えて継続就労するパターン

 図1のように病院の医事課に派遣されたAさんは、3年を超えて同じ医事課で派遣勤務することはできません。ただし、後述する「意見聴取」の手続きが取られている場合、3年の医事課就労後に条件が合えば総務課に異動できますし、別の医療機関で派遣就労することもできます(Q&A「3」参照)。また、3年に達する際に派遣会社で無期雇用に転換すれば、引き続き医事課で派遣就労できる可能性もあります。

 なお、小規模なクリニックなど、事業所全体で1つの組織単位となっているケースでは、Aさんのように異動により同一事業所の他部署に勤務することはできないため、別の医療機関での派遣勤務など他の選択肢を検討することになります。

 A2 派遣労働者単位の「3年」は、2015年9月30日以後に締結する派遣契約から改正法が適用されるので、改正以前の勤務は通算しません。そのため、現時点(2016年1月)で既に3年以上勤務していても問題なく就業できます。

 改正前後どちらの派遣法に基づく契約であるかによって新旧の取り扱いが決まるため、例えば2015年4月1日から1年契約を結んでいる場合、改正後も旧法の適用を受けています。この契約を2016年4月1日で更新した場合、その時点から改正法が適用され派遣労働者単位の「3年」も起算されることとなります。