次に、経営者・管理者側からの質問内容と回答をご紹介しましょう。

 A3 適正な手続きの結果、継続して派遣労働者を受け入れるケースはあると思いますが、今回の法改正は、永久に派遣を受け入れ続けることを目的としたものではありません。

 受入期間については、Q1でご説明した「派遣労働者単位3年」とはまた別に、もう1つ「事業所単位3年」の制限が設けられています。

 これは派遣先の常用労働者との代替を防止するためであり、派遣先の事業所ごとに「有期雇用派遣労働者の受け入れは原則3年まで」とする期間制限が設けられているのです。

 派遣法における事業所は雇用保険法の事業所と同じであると定義されていることから、原則として、雇用保険の適用事業所ごとに受入期間を設定することになります(雇用保険の適用については実務上様々なケースがあり、派遣先事業所が雇用保険適用事業所であるかどうかだけで判断することができないこともあります。その場合は、三六協定の締結単位など実態で判断することになります)。

 「事業所単位3年」の期間制限は「派遣労働者単位3年」と異なり、延長することができます。延長する場合、派遣先で過半数を組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者に対して派遣受入の可否を意見聴取しなければなりません。意見聴取は適切な代表者に対して書面で行い、結果を保存、周知するなど手続きが定められており、これらの手続を3年ごとに適正に行った場合は継続して派遣労働者を受け入れることができます。

 このような手続きのもと、事業所として「派遣労働者を受け入れ続ける」ことはできますが、この場合でも、同一の有期雇用派遣労働者を同じ組織で継続して受け入れることはできません。

 A4 変更はありませんが、「募集情報の周知」の規定に注意が必要です。

 冒頭にご説明したように、原則として、医師、看護師などの医療専門職は医療機関へ労働者派遣の対象となりませんが、産休・育休代替要員派遣は例外として認められてきました。これらの代替要員派遣についての法改正は行われていません。そのため、これまで通りの活用が可能です。

 ただし、今回の改正では正社員化促進のために「募集情報の周知」に関する規定が新たに設けられましたので、この点には注意が必要です。

 この制度は「派遣先で正社員を中途採用する場合は、受け入れている派遣労働者(1年以上勤務の者に限る)に対して、その募集情報を周知すること」というものです。もし、受け入れている間に正社員を募集する機会があれば、派遣労働者に直接、または派遣会社を通じてその旨を伝え、希望者が応募できるようにしてあげてください。

著者プロフィール
中宮伸二郎(社会保険労務士法人ユアサイド代表社員)●なかみや しんじろう氏。立教大法学部卒業後、社会保険労務士事務所勤務を経て2007年に社会保険労務士法人ユアサイドを設立。非正規雇用問題を得意とし、派遣元責任者講習の講師を務める。