トラブルの経緯

イラスト:畠中 美幸

 A診療所を翌月末で退職予定の職員B子。そのB子から、年次有給休暇の取得に関する申請書が出てきた。その内容を見て、院長は驚いた。残された出勤日数をすべて年次有給休暇として消化したいというのだ。

 本人いわく、これまでほとんど年次有給休暇を取得することがなかったので……とのことだった。しかし、勤務年数が比較的長かったB子が抜けることの穴は大きい。業務の引き継ぎもまだ十分にできていない状況だ。

 それに、これが前例となって、退職前の年次有給休暇の「まとめ取り」が慣例化したら困る。そのため院長は、「今まとめて休まれたら、大変なことになる。君なら、それくらい分かるだろう?」と不満そうな表情で年次有給休暇の取得を考え直すよう迫った。

 これにB子が反発。「それなら労働基準監督署に相談するしかない」と言い出し、両者の間が険悪になってしまった。

今回の教訓

 年次有給休暇は働く職員に認められている休暇であり、入職から6カ月経過後に10労働日が付与され、その後1年経過ごとに1〜2日付与日数が増え、最大で20日間取得することができる。取得に当たっての時効は2年間であることから、年次有給休暇を取得しなかった場合は翌年度にそれが繰り越され、最大で40日間取得することができる制度である。

 今回のトラブル事例のように、残された年次有給休暇を退職時にまとめて取得することによって、労使関係が悪化する医療機関は少なくないのが現状だ。中には、「もう二度と出勤するな」と解雇をして、年次有給休暇の取得に加え解雇のトラブルが生じるなど、二重のトラブルを抱えてしまうケースもある。

 さて、その取り扱いを考えてみると、まず年次有給休暇の取得については、労働者の権利としてそれが強く守られていることに注意をしなければならない。そもそも労働基準法は、労働者保護の考えによって成り立っているものであり、阻止をすることができないというのが法律による運用である。