このように、部門間の対立や意思疎通の不足は百害あって一利なしであるため、改善をしていかなければならない。その際には、本質的なところから手を付けなければ表面的な改善しかできず、根本的に同じ問題が繰り返される可能性があることに注意をしなければならない。
ミーティングばかり増える事態を避けるには
多くの場合、部門間の対立は、お互いのコミュニケーション不足により生じる。当然といえば当然であり、その解消策としてA整形外科診療所のように「風通しを良くするために会議やミーティングを増やそう」と取り組む医療機関が少なくない。
この方法は悪くはないが、さらに本質的なところを解消しなければ、会議やミーティングばかり増えていく状況に陥り、隘路へと入り込んでしまうこともある。そのため、本質的な解決に導くために、「患者の満足度」と「業務の生産性」という2つの軸で関係者全員によって議論を進めることが必要だ。
まず、患者の満足度に関しては、何が「満足」かという点を関係者全員で共有する必要がある。あらゆる策を講じれば当然患者は満足するであろうが、人員体制の限界もあり、経営面を考えると現実的ではない。
それでも、患者満足という視点で議論を進めると、限られた人員体制の中、それぞれの部門がどういった役割で何をしなければならないのか、大まかな方向性が見えてくる上、管理者の役割も明確になってくる。そうした方向性を明文化し、診療所全体で、「患者のための職員行動指針」として定めてもよいだろう。
行動指針に具体例を盛り込む
その行動指針は全ての部門の全職員が共通に理解するものとし、場合によっては、行動指針に基づいた具体的な行動例やNGと考えられる行動例などを明示していってもよいだろう。そうした議論をしていく過程で、職員が、自分たちの考え方には問題があったと感じて、意識を変えてくれることがある。
東海地方のある診療所では、ほぼ全員の職員が集まり自分たちでNG行動をまとめていった結果、100項目近くNG行動が集まったため、それらを整理して職員全員に配布した。全員を同じベクトルに向かわせるツールができたことで風通しが良くなり、職場の一体感が高まったという。
一般に、職場内のミーティングでは1つの事象を取り上げ、その課題にどう対処するのかといった視点で議論をすることが多く、様々な職員が一同に集まり、「そもそも患者のためにどうあるべきか」といった議論をする機会はそれほど多くない。職員にとっても新鮮なものとなり、また議論の過程でお互いにやんわりと気になることを注意することもできるため、職場風土のさらなる改善という点でも有効だ。