以上のような取り組みなども踏まえると、そもそも部門間の対立の根本的な原因は、組織全体の方向性などがきちんと明示されていないことにある、と考えることもできる。

 逆に言えば、組織全体に大きな方向性があり、スタッフが同じ方向に向かえるようにするための取り組みがなされていれば、仮に内部の人間関係に問題があったとしても、「患者のために、今、○○をしなければならない」という意識から、例えば「△△をしなければ、患者は不安を感じて受付の窓口でも同じ質問をするかもしれない」と感じてプラスアルファの行動を取るなど、組織の方向性に則して動ける職員が増えてくるはずである。

「頑張りすぎる部門」から遠ざかりたいという心理
 当然、こうした議論をする上では、業務生産性についても意識をしなければならない。限られた時間や人員で、目指す方向性を実現するにはどうしたらよいのかという視点があれば、「できるサービス」と「できないサービス」の議論が可能になる。

 実は、部門間の対立は、各部門がどのレベルまでサービスを手掛けているかという「程度の違い」によって生じることも多い。例えばBという部門が手間のかかるサービスを提供している場合に、他部門のスタッフが「何でB部門はそこまでやるのか」と考え、自分も部門も巻き込まれないようにB部門を避けていることもある。
 
 以上のほか、部門間の対立の背景には、在籍期間の長い職員の問題があったり、そもそも特定の部門に人員が多く配置されすぎているといった不公平感が存在していることもある。

 こうしたことも実は、前述のように全体を俯瞰して方向性を明示したり、業務生産性を意識してもらうことで、同時に解消させることが期待できる。コミュニケーションを充実させることに目がいきがちなこの問題だが、実は、方向性や方針を院長が示すことで大きく改善に向かうこともあるので、その部分が足りないようであれば取り組んでみてはいかがであろうか。
(このコラムは、実際の事例をベースに、個人のプライバシーに配慮して一部内容を変更して掲載しています)

著者プロフィール
服部英治●はっとり えいじ氏。社会保険労務士法人名南経営および株式会社名南経営コンサルティングに所属する社会保険労務士。医療福祉専門のコンサルタントとして多数の支援実績を有する。