Illustration:ソリマチアキラ

 ここ数年、月曜は腿の後ろを中心とした体の痛みで目覚めるようになった。日曜の朝に、老体に鞭打って、ハタチそこそこの若者とサッカーをしているからだ。

 事の起こりは4年ほど前。知り合いの息子さんである薬学生のAくんと知り合ったのがきっかけだ。Aくんは薬科大学のサッカー部に所属しているという。当然ながら部員は薬学生ばかり。ボクはピンときた。サッカー部員と仲良くなれば、うちのリクルートにつながるはず!

 書くまでもないが、地方の中小チェーンは、慢性的な人手不足で、新卒を採用するために涙ぐましい努力を重ねている。大手チェーンに勝つために、社風とか薬局内の雰囲気とか、先輩や社長の人柄(!)をアピールするしかない。しかし、日ごろの接点がなければ、ボクがどんなに薬剤師を大切にしているのかなんて、学生に分かるはずもない。

 そこで、接点を作るために、Aくんが所属するサッカー部のスポンサーになることにした。スポンサーといっても、たいそうなことではない。ユニフォームにロゴを入れてもらう代わりにユニフォーム代を負担したり、試合のときにスポーツドリンクを差し入れたり、飲み会にボクのポケットマネーからカンパするといったくらい。

 ただ、お金を使うだけでは薬学生の心はつかめない。ボクだけじゃなく、現場の薬剤師たちが一緒に汗を流すことに意味があると考えた。そんなこんなで、ボクの大切な日曜の朝は、サッカーの時間となったわけだ。

 休憩時間に「薬局でアルバイトすると国家試験にも役立つよ」と声を掛け続けたところ、今年の夏休みは数人が手を挙げてくれた。薬局長のCに聞くと、彼らは楽しそうに働いてくれているという。このままいけば、社員になってくれるかも、しめしめ、と思っていたら……。

 先日の飲み会で、アルバイトに来てくれている4年生のBくんが、ボクの隣に座った。彼は「薬局でアルバイトさせていただくと、本当に勉強になります」と切り出した。そうだろう、そうだろう、とボクはほくそ笑む。そしてドキドキしながら聞いてみた。

「Bくんは卒業後の進路はどう考えているの?」

 すると予想外の答えが返ってきた。

「薬局もいいかと思っていたのですが、薬局長のCさんが、給与や休暇などの待遇は製薬会社が一番いいよって」

 え、えぇぇぇ〜!よりによって、薬局長がそんなことを言っているなんて。ボクがショックを受けたのに気づかず、Bくんは続ける。

「製薬会社が無理なら、夏過ぎに募集がある大病院を狙って、そこがダメなら大手チェーンかなぁと考えています」

 必死に平静を装いながら「なんでそう考えるの?」と聞いたところ、「薬局長のCさんが『うちの薬局なら、ほかが全部ダメだったときに、国試が終わった後でも雇ってもらえるよ』と言ったから、まずは挑戦してみようと思って」という。

 めまいを覚えているボクに、追い打ちを掛けるように言った。

「在宅とか、かかりつけ薬剤師とかに一生懸命になっている薬局に行くと、時間外に呼び出されたり、いろいろ大変だと言っていました」

 オイ、Cよ。薬学生に本音を語るなよ。これじゃ、Own goalじゃないか!(怒)。ボクの戦略は、チームメイトからの攻撃によって、もろくも崩れ去った。

 そういえば、最近、うちのスタッフは練習で見かけなくなった。あー、社長の心、社員知らず……。社長は本当にツラいのだ。(長作屋)