質問
 訪問看護の管理者を5年ほど行っています。これまで、訪問看護の介護報酬の目立った引き下げはありませんでしたが、2015年度の報酬改定は、全体の改定率に比べればましとはいえ、引き下げが目立ちます。先行きが不安で仕方ありません。

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 私自身、今回の介護報酬改定には正直驚いています。介護保険制度が始まってからの15年間、ほかのサービスが報酬引き下げの目にあっていたとしても、訪問看護だけは免れてきましたから。

 訪問看護ステーションからのリハビリについては、2012年度の診療報酬とのW改定の際に事実上引き下げられましたが、今改定で、訪問看護の報酬そのものをいじってくるとは夢にも思っていませんでした。ですが、この結果について私は、「引き下げの時期が少し早まっただけ」と理解しています。遅かれ早かれ、18年度のW改定までには確実に引き下げられるだろうと考えていました。

 団塊世代が75歳を迎える「2025年」まで、残り10年となりました。国は迫り来る“2025年問題”を見越し、天井知らずの医療費・介護給付費を抑制しようと必死です。団塊世代がそろって要介護状態になることを前提にしている施策自体、個人的には疑問を抱いていますが、そのような前提で「お金がない」と国が言う以上、介護報酬を引き下げるしか方法はありません。それが今回のマイナス改定というわけです。

 もっとも、訪問看護サービスについては「まだまだ不足しているのだから報酬を引き下げる必要はない」とお考えの人もいるでしょう。ですが、これについては私自身、国の方針もある意味仕方がないのかな、と思う部分があります。その理由について、述べましょう。

医療依存度の高い利用者の受け入れを
 まず、介護保険と医療保険の双方に位置付けられている訪問看護の報酬の特殊性が挙げられます。国は恐らく、“どんぶり勘定”の医療保険の報酬をなくし、介護保険に一本化したいのだろうと想像しているのですが、医療保険による訪問看護の対象を、厚労大臣が認めた19疾患と2つの状態(つまり難病やターミナル)というかなりヘビーな状態や予後の方たちとしてしまった以上、現実的に変えるのは難しいのではないでしょうか。

 こうした医療依存度の高い対象者への訪問看護の診療報酬は、介護保険のそれとは異なり、訪問回数を重ねていくほどに1回当たりの訪問単価が下がる仕組みになっています。そうした医療保険による訪問看護とのバランスを取る目的もあって、今回、介護保険での訪問看護の単価を引き下げたのではないかとみています。

 また、知人のある看護系大学院の教授(厚労省の多くの委託研究を手掛けている方です)から聞いた話では、全国の訪問看護ステーションを対象に行った調査により、医療保険による訪問看護を全く行っていないステーションがかなりの数存在することが判明したそうです。つまり、国は医療ニーズの高い患者を入院ではなく在宅に移行させることを真剣に考えているにもかかわらず、受け皿となるはずの訪問看護ステーションが、実際のところあまり機能していないというわけです。

 例えば、癌末期の患者で、生きる望みを抱いているものの摂食障害が生じているような場合、病院でポートカテーテルなどを造設し後は在宅で様子をみる、という絵を国は描きたいのだと思います。太字部分がある時点でこの患者は医療保険による訪問看護の対象となるわけですが、現状ではその受け皿が圧倒的に不足しているのです。太字部分を、ALSに代表される神経難病での気管切開や人工呼吸器装着に置き換えても同様です。このような状況は望ましくないと考え、国は介護保険の訪問看護の基本点数を15年経ってやっと見直すことにしたのではないかと思います。もっと言えば、今回の介護報酬の引き下げは、「訪問看護事業所は医療依存度の高い患者をもっと受け入れるように」という国からのメッセージとも解釈できるでしょう。

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つぼうち のりこ氏●1988年東京女子医大付属看護専門学校卒。同大付属病院、日本医大多摩永山病院などを経て、98年から訪問看護に従事。セントケア(株)訪問看護部次長、(株)ミレニア訪問看護サービス部長を務め、訪問看護事業所の立ち上げと運営・教育に携わる。2013年におんびっと(株)を設立。訪問看護ステーションへのコンサルティングや教育事業を手がけ、14年2月から訪問看護サービスをスタート。