質問
 病院の退院支援室に配属になったばかりの看護師です。前回の訪問看護の報酬体系の記事を興味深く拝見しました。そこでとても初歩的な質問なのですが、そもそも訪問看護の対象者はどのように決定されているのでしょうか?利用基準や利用状況を教えてください。

回答者
坪内紀子(おんびっと[株]代表取締役)


 今回は、訪問看護の利用に関するご質問ですね。介護保険医療保険かによっても異なりますが、介護保険の場合は、65歳以上で要支援・要介護と認定された人、もしくは40歳以上65歳未満で、がんや関節リウマチなど国が定める16特定疾患の人で要支援・要介護と認定された人が利用対象になります。

 一方、医療保険での利用は、介護保険の要支援・要介護に該当しない人が対象。年齢や国籍も問いません(要は、日本の保険証があればいい)。ただし、介護保険の要支援・要介護認定を受けた人でも、末期の悪性腫瘍や神経難病など厚生労働大臣が定める特に重い疾病を抱えた人や、病状の悪化や退院直後などで医師から特別訪問看護指示書が出されている人は、医療保険の訪問看護を利用します。

 制度上はこのような縛りがあります。では、実際に我々が、どのようなルートでどのような利用者をご紹介頂いているのか、紹介ルート別に解説していきましょう。

最も多い「ケアマネ」からの依頼
 介護保険制度開始以降、圧倒的に多いのは、ケアマネジャーからの依頼です。ただし、適切な利用に結び付いているかは、正直疑問ではあります。私が一番問題だなと思うのは、利用者自身に潜在的な医療ニーズがあるにもかかわらず、本人があまり多くを語らなかったり、家族が本人の病気に関して無関心だったり避けて通っているために、訪問看護の利用につながらないケースです。

 例えば、高血圧で内服加療中の患者さんで服薬管理が不十分なケース。認知症で要介護認定を受けており、訪問介護などの介護サービスは利用しています。ですが、肝心の服薬については、何となく「飲めていないな〜」とケアマネジャーは気付いてはいたが、主治医に相談することもなく、訪問看護を利用するわけでもなくそのまま放置されていた——。新規利用者の初回訪問時に、このような患者さんに頻繁に遭遇する訪問看護師は、私だけではないはずです。

 本来なら、服薬管理が困難と分かった時点や、医療機関から退院したばかりの時、急激な廃用症候群の進行時などに、訪問看護が早期に介入することで、病状の悪化を未然に防ぐことが可能です。インスリン自己注射を長年自分で行ってきた人であれば、主治医の意見書に認知症に関する記載が目立つようになってきた時が、介入の良いタイミングです。ですが、ケアマネジャーの大半が介護職出身ということもあり、訪問看護の役割がまだまだ正しく周知されていません。他の介護保険サービスに比べて利用料が高いこともあり、訪問看護の利用はどうしても後回しにされてしまうのが現状です。

 もともと医療職ではないケアマネジャーが、訪問看護の必要性をアセスメントすることには限界があります。ですから、訪問看護師が日ごろからケアマネジャーの相談に気軽に応じ、「ちょっと見てくれないかしら〜」と言ってもらえるような、なじみの関係性を築くことが大切です。

 例えば、独居の要介護者に定期訪問している訪問介護事業所のヘルパーが、利用者が最近、食欲が落ちて臥床がちになったことを心配し、自分たちの事業所に併設する居宅介護支援事業所のケアマネジャーに「看護師に見てもらいたい」と相談することがあります。そのケアマネジャーから当社に訪問依頼があれば、私はケアマネジャーさんと共に利用者宅に出向いてアセスメントを実施し、納得のいく形で訪問看護の必要性の可否について説明しています。