質問
 訪問看護ステーションの管理者(2年目)をしている看護師です。私たちの地域では、主治医との訪問看護指示書の書類のやり取りを対面で行うことが慣例となっています。ですが、訪問と訪問の合間をぬって医療機関に出向くのは手間がかかり、待たされることもしばしばで、毎回気が滅入ります。郵送では駄目なのでしょうか?

 お気持ちお察しします。確かに、地方によって直接手渡ししているところがあるようですね。質問者の方がおっしゃる通り、手渡しとなると、訪問と訪問の合間に医療機関に出向くことになるわけですが、場合によっては無駄に待たされたりします。医師ほどの高給取りではないにせよ、訪問看護師だって1時間当たりそこそこ稼ぎますから、医療機関巡りに時間を取られることは、事業所の運営上、非効率です。中には、訪問看護指示書の書類を手渡す機会を、新規患者を紹介してもらう「営業」の機会と捉えている事業所もあるかもしれません。が、実際に新規の依頼はありますか。もしなければ、それは「名ばかり営業」です。

 そもそも、訪問看護指示書の書類のやり取りに正解はありません。現状では医療機関側の指示に従わざるを得ないのだとは思いますが、本来はそれぞれのステーションで自分たちの方針を明確にしておいた方がいいものと私は考えます。

 当社では、毎月作成する報告書および訪問看護計画書については、郵送によるやり取りを基本としています。報告書の備考欄に「○月からの訪問看護指示書の作成をお願いいたします」と明記し、指示期間満了の最低2カ月前のタイミングで主治医に送付します。その際、切手を貼った返信用封筒も必ず同封しています。

 ところが最近、都内の2つの某大学病院から郵送を拒否されました。理由を尋ねると、「診療報酬が発生する書類は、基本的に患者さんに直接お渡ししたいので」と言われました。ちなみに、独居の認知症患者さんはやりとりが難しく紛失させてしまうリスクがあるにもかかわらず、そういう方も同様だそうです。

 もしかすると、郵送を拒否する大学病院では医療費の請求漏れが頻発しているのかもしれません。そうだとしたら、次回の受診日にきちんと計上される仕組みを電子カルテ上に整備しさえすればいいのに……と思えて、非常に残念です。

 また、これらの書類を送付する部署が医事課だったり文書係だったりと、医療機関によっててんでバラバラなのも厄介です。院内ルールなのでしょうが、そんなこと外部の人間には分かりません。そうするのが当たり前かのように説明されても、困ってしまいます。

「書かされている感」満載の訪問看護指示書
 ところで、この訪問看護指示書、存在意義はどこにあるのでしょうか。医師の書いた訪問看護指示書を見て、何とも言えない「書かされている感」を感じ取っている訪問看護師はたくさんいらっしゃるでしょう。特に勤務医がそうです。私自身、実際に「なんで俺が訳の分からないものを書かなきゃいけないんだ!1円にもならないのに」と直接文句を言われたこともあります。

 米国では、医師が「訪問看護が本当に必要」と考える患者にしか、そもそも訪問看護指示書を発行しません。ですから指示書のやり取りで頭を抱えることがないのです。医師が主体となってオーダーしてくるからです。一方、日本では、そもそも医師が訪問看護サービス自体を知らないので、米国の医師のようにオーダーできないのです。「医師の指示の下」と法律で謳われているため、訪問看護において訪問看護指示書はコンプライアンス(法令遵守)上欠かせない代物ではあるのですが、訪問看護師側から医師に催促しないと、ほとんどの場合、手元に届かないというのが現実です。

 そもそも、「訪問看護指示書」の中身って、大したことないのが実情です。先日、当社に実習に来ていた看護学校の担当教員が、看護学生に対して「訪問看護指示書には何が書いてあるの?それを見れば分かるでしょ〜。訪問看護指示書ありきなのよ〜!!」などと話していましたが、私はそれを聞いて「この先生も、訪問看護未経験者なんだ……。何も知らないんだな」と思ってしまいました。実習初日の学生さんへのオリエンテーションで、私は学生さんに伝えていたのです。「訪問看護指示書はコンプライアンス上はなくてはならないものだけど、現実には『飾り』ですから〜」と。