質問
 訪問看護ステーションの管理者になって2年目です。このたび、訪問看護の経験のない看護師が新たに入社することになりました。未経験者を受け入れるのは初めてなので、どのように対応していけばよいのか、アドバイスをお願いします。

 それはおめでとうございます。今回は一例として、弊社で実施している入職時のオリエンテーション、現場の同行訪問研修の方法についてご紹介します。

入社時のオリエンテーション
 入職した初日は、事務的な手続きなどを終えたら、まずは所内でできるオリエンテーションを行います。入社当日は誰でも、多かれ少なかれ緊張していますので、緊張をほぐせるように配慮しながら実施していくことが重要です。オリエンテーションは「これからここで一緒に働いていく仲間に対しての、はじめの一歩としての道しるべ」と捉えておくといいと思います。

 弊社では、以下のような内容について、ざっと1時間程度で説明していきます。

(1)出入りの際の鍵(弊社はキーボックス管理)の取り扱いと入退室管理表への記入
(2)書庫の鍵の場所とルール
(3)カルテに関しての説明
(4)訪問スケジュール表の見方とルール
(5)訪問終了時の約束事(給与の元になる訪問実績の記入・記録用紙の補充と整理・訪問バックの備品の補充)
(6)訪問バックの説明
(7)ロッカーの使用方法
(8)備品の取り扱い
(9)電話の応対&転送(解除も含む)方法
(10)入社時同行チェックリストの説明
(11)勤務・休暇希望日の記入方法
(12)電動自転車にまつわること

現場の同行訪問研修に向けて
 訪問看護は、現場に出向かなければ何も始まりませんから、入社当日の午後から先輩看護師との同行訪問研修を始めます。新入職員には同行研修の前後に必ず、その日、訪問研修を行う利用者の情報を、カルテから収集してもらいます。そのためにも、日頃から誰もが情報収集できるカルテの整備は必須になります。

 入社時期にもよりますが、入社が月初なら同行訪問研修を通して利用者に配布する訪問看護計画書の授受方法について、また月の中旬ならば請求書・領収書の配布方法についても、訪問時に学ぶことができます。

 弊社では、同行訪問研修後は毎回、新入職員に「入社時同行訪問チェックリスト」を記入してもらっています。これは、(1)同行前の約束、(2)訪問時の注意点、(3)実際に行ったケアと見学内容、(4)訪問後の約束、(5)次回は一人で訪問可能か否かの自己判断——といった項目を確認する、簡単なチェックリストです。 記入したら同行してもらった先輩看護師に渡して確認してもらい(先輩看護師用のチェック項目も設けている)、それを最終的に管理者が確認します。チェックリストは、2回目の訪問以降、各利用者に対して、新人看護師が一人で訪問できるかどうかを決定する上での判断材料にしています。

 新人への指導法においてよく質問を受けるのが、どのくらいの期間、同行訪問研修を行うか、という点ですが、弊社の場合、同行訪問研修は通常1〜2週間程度としています。入職者の臨床経験の年数に関係なく、数カ月間は同行訪問研修を行う事業所もあるようですが、私としては、一律にそこまでは必要ないと考えています。もちろん総利用者の人数にもよりますが、すべての利用者に対して初回は同行訪問するのはあまり意味がなく、むしろ人件費がかさんで経営を圧迫する結果しか招かないと考えております。

 以前のこの連載でもご紹介したように、訪問看護ステーションが訪問する患者さんは、その業務内容から大まかに8パターンにカテゴリーできます。

 8パターンとは、(1)リハビリテーションがメインの方、(2)内服管理がメインの方、(3)様々なカテーテル類の管理が必要な方、(4)終末期の方、(5)神経難病の方、(6)精神系症状の方、(7)小児、(8)家族への教育がメインの方——。これら8種類の患者さんを同行訪問研修として経験すれば、その後の訪問の際にも応用できるのです。

 弊社では、8パターンの同行訪問研修を実施した後は、その利用者さんを今度は独りで訪問してもらい、慣れてきたら他の利用者に一人で訪問してもらいます。

 もちろん、最初のうちは送り出す管理者も新入職員も不安が大きいとは思いますが、管理者は、新入職員が訪問に出向くとき、また帰社したときは直接フェイストゥーフェイスの対応を心がけましょう。激励の声掛けを忘れずに、また私は経営者でもあり管理者でもあるわけですから、「何が起こってもすべての責任は私にありますから安心してください!」というオーラを出します。

 また、これら一連の取り組みに関しては、事業所内で遵守ルールを作成して、いつでも確認できるような仕組みにしています。(このルールは「聞いた」「聞いていない」「言った」「言ってない」防止に一役買うこと間違いなしです)

技術指導で自信を取り戻してもらう
 さて、ここまでは、訪問看護は未経験ながら、事業所の即戦力として期待できるナース向けの研修の一例をご紹介しましたが、弊社は訪問看護事業所のコンサルティング事業も行っており、コンサルティング契約をしている会社の看護師(多くは、看護師として目指すべき方向性を見失いかけて落ち込んでいるケースや、臨床経験の浅いケース)を対象に同行訪問の研修も行っています。その場合、就業経験や習得したいスキルなどに個人差が大きいため、個別に対応していきます。研修期間も看護師により様々です。

 自施設で即戦力とすることを目的にしているわけではないので、研修内容は当然変わってきます。主には、訪問看護師として必要なスキルを習得したり、手技を再確認するといった目的が多いです。例えば、CVポートの針の交換や、女性の尿道留置カテーテル交換に技術的に自信が持てない看護師に直接技術指導をして自信を取り戻してもらったこともあります。また、看護師によってはそれらの応用ができるレベルにまで引き上げたりもしています。

 さらには、訪問看護ならではの情報収集の方法や、収集した情報の整理の仕方の指導も重視しています。 情報収集については、現場の中で何度も経験しながら積み重ねていくことができないため、こちらで個々の看護師用にレポートの書式を作成し、それを使用して収集した利用者に関する情報を整理してもらっています。その後は私が添削します。評価のポイントは、実際に行おうとしているケアの根拠が理解でき、それを実行に移すことができるレベルに達したかどうか、という点です。

 こうした弊社での研修を終えた看護師らはその後、自分たちの職場で活躍しています。

 臨床経験の年数だけでは即戦力になりにくいのが訪問看護師です。「患者さんの家にお邪魔させていただきながら、その中で訪問看護師としての専門性をいかに発揮してくるか」という視点を持つことが欠かせません。

 実際には、勘のいい人、悪い人といろいろな看護師がいますが、懲りることなく粘り強く向き合っていくしかないのでしょう。これが、これまで数多くの訪問看護未経験者に向き合ってきた私の持論です。