——その後の転職活動はどのようにされたのですか。
 1回目の転職は、医師紹介会社を通してベッド数約200床の総合病院に勤務しました。「当直なし」が条件でした。現在の当直制度はリスクが高すぎます。補償や給与もほぼ支給されないうえ、体力的にも翌日の勤務がきついので希望したんです。

 このため、当直はありませんでしたが、徐々に時間外でもバンバン呼ばれるようになったんです。内視鏡が必要になると何時だろうが見境なく呼ばれる。僕はオンとオフの時間をはっきり区別したいほうなので、こうした状況が我慢なりませんでした。これに加え、「やっぱり当直をやってもらえないか?」と言われて嫌気が差し、3年で辞めました。

 2回目の転職では、当直や時間外勤務のないところを探しました。現在勤務しているのは検診センターで、一般検診と僕の得意とする内視鏡検査がメーン。勤め始めて約3年になります。年収は前の総合病院時代から変わりませんが、知り合いの話を聞く範囲では恵まれているほうだと思います。

 紹介会社はいろいろでしたね。いい加減な会社もたくさんありました。こちらの条件を全く無視して紹介してきたり、「この点に関して、先方に問い合わせてください」とお願いしても返信がなかったり。実際に面接へ行って話すと、条件が違うこともしばしばありましたが、一度などは紹介会社の連絡ミスで、わざわざ出向いたのに募集が締め切られていたこともありましたよ。そういう人がいる会社はその後、もちろん相手にしませんでしたが。

——転職を希望している人に何かアドバイスはありますか。
 一番大事なのは、自分がどうしたいかだと思います。すべての希望を満たすのは無理です。何かを犠牲にして、何を得るのか。多少条件面が悪くても、それがどうしてもやりたいならやればいい。いいとこ取りは難しいですから。

 僕自身は現状にとても満足しています。家族との時間も十分に取れますしね。医師になったときからこうした働き方を強く望んでいたわけではないのですが、気づくと今のようなスタイルになっていました。とりあえずはしばらく今の仕事を続けるつもりです。もっと医療環境が改善すれば、転職もありえますが、現状のままでは難しいですね。

 それでもたまに「最先端の医療現場で仕事をしたい」と考えることがあります。僕が若くて、まだ独身だったらそうした道を選ぶかもしれませんが、そうではないし、「もう、いいかな」って正直思います。年収が下がる、自分の時間がなくなるなどの犠牲を払わないといけませんから。驚いたのは、以前だったらとても入れなかった有名病院が定員割れしていて、今は行こうと思えば誰でも行ける。恐らく条件が悪いせいなのでしょうが、時代は変わっているんですね。