私は日中の時間帯内に、以下の要件が満たされることによって、利用者の夜間帯のオンコールを十分回避できると考えています。
(1)次回の訪問予定日時および訪問者が確実に利用者やご家族に伝わっている。
(2)本人に関わる医療行為についてはどんなものでも、本人およびご家族の同意の下、日中の訪問時に可能な限り教育的な関わりを十分しておく。
(3)ナースが日中に訪問した時、夜間帯に影響を及ぼしそうな状況が起きていたら、管理者などに速やかに報告し、追加でその日の営業時間内に再度訪問しておく。
具体的にみてみましょう。(1)は、「見通しを提示するケア」に該当します。例えば、「次は3日後の14時に、○○という看護師が伺いますね」とお伝えしておくと、困った事態が次回の訪問日までの間に起ったとしても、「急を要するわけではないから今はこうしておいてみよう」と利用者およびご家族が意思決定する機会を得ることができます。
(2)については、「利用者本人にまつわる医療行為は、家族が代行できる」との認識が薄い在宅関係者がどうも未だにいるようで、非常に困ったことだと思っています。これまで私が経験した家族の代行内容を少し紹介すると、例えば、息子さんが母親の尿道留置カテーテル交換、膀胱洗浄、ミルキングをすべてマスターされたケースや、息子さんが父親のポートカテーテル(輸液自動ポンプ付)のアラーム回避から、針交換までをすべてマスターされたケースなど、数え上げるときりがありません。この場合、夜間にコールがあっても、電話でナビゲーションするだけで家族が対応できるケースが多々あります。
当然、技術を習得してもらうまでには頻回に訪問し、決して指導ではなく、教育的関わりをたっぷりと確保するわけですが……。しかも、利用者家族の希望に応じてではありますが、そこには訪問看護の醍醐味が満載です。家族でも代行可能な医療行為を、訪問時に看護師が実際に行って帰るだけでは意味がないと考えています。
(3)については、利用者の状態変化が伴っていますから、再訪問の際、翌日も朝一番で訪問できるようにスケジュールを調整してから利用者宅に伺い、その旨を説明すると、利用者家族は非常に安心します(もちろん、この時に追加訪問の料金についても説明します)。すると不思議なことに、「朝までは何とか家族で乗り切ろう」と利用者家族が覚悟を決められたり、「気負わなくても大丈夫」と思ってもらえるのです。
国は在宅医療従事者に対して、「24時間365日」対応をひたすら求めていますが、日中の“本番”に可能な限りのできる手立てをしておく、つまり先手を打っておきさえすれば、実はオンコールはそれほど鳴らないのです。基本的に私は、オンコール当番は管理者の業務の一環だと捉えているのですが、以前、ある管理者がこう言いました。「この、緊急携帯は壊れているのかと心配になるくらい鳴らない!」と。そう。有能な管理者ほど、“鳴らない”携帯を持っているのです。
つぼうち のりこ氏●1988年東京女子医大付属看護専門学校卒。同大付属病院、日本医大多摩永山病院などを経て、98年から訪問看護に従事。セントケア(株)訪問看護部次長、(株)ミレニア訪問看護サービス部長を務め、訪問看護事業所の立ち上げと運営・教育に携わる。2013年におんびっと(株)を設立。訪問看護ステーションへのコンサルティングや教育事業を手がけ、14年2月から訪問看護サービスをスタート。